講義No.13990 国際関係学

冷戦後の米露関係から考える国際秩序

冷戦後の米露関係から考える国際秩序

アメリカが主導する国際秩序とは?

1990年代初頭に東西冷戦が終わりを迎えたとき、その後の世界は基本的人権・法の支配・民主主義などの普遍的な価値観に基づく国際秩序が到来すると考えられていました。そうした秩序の中心にいたのは冷戦の勝者とされたアメリカです。アメリカが覇権的な影響力を行使すれば、各国は国際協調に専念し、平和を安定的に維持できると思われていたのです。しかし、アメリカが主導とした国際秩序は今、崩壊しつつあると言われています。2022年2月に勃発したロシア・ウクライナ紛争は、そのような見方をさらに強固にしました。冷戦後の国際秩序が今後も続くのか、あるいは新たな国際秩序が形成される節目に我々はいるのか、注目されています。

理想的な国際秩序は、なぜ実現しなかったのか

アメリカが主導する国際秩序が実現しなかった理由の1つとして、冷戦後のアメリカが大国ロシアの安全保障に対し十分な配慮をしてこなかったことを挙げることができます。例えば、アメリカは国連安保理が承認しない戦争をコソボやイラクで実行しました。また冷戦時代、ソ連の影響力の拡大を封じ込めるために発足したアメリカの軍事同盟NATO(北大西洋条約機構)は、ソ連崩壊後に解体されるどころか、加盟国を増やしロシアの方角に向かって拡大しました。2008年には旧ソ連の構成国であったウクライナとジョージアのNATOへの将来的加盟が宣言され、ロシアの懸念をさらに深刻なものとしました。ロシアは昔から、さまざまな大国がそれぞれ長い歴史の中で培ってきた勢力圏を互いに尊重しながら国際秩序を維持すべきだと考えています。それゆえ、アメリカの考える国際秩序のあり方とは、どうしても考え方が相いれないのです。

1つの正義では語れない国際秩序

理想的な国際秩序は各国の利益や主張をうまく調和してつくり上げるものです。世界で起こっている問題は1つの軸で判断できることはほとんどなく、各国がどのような世界の見方をしているのか、何を考えているのかを考慮する必要があります。

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先生情報 / 大学情報

国際教養大学 国際教養学部 国際教養学科 グローバル・スタディズ領域 助教 竹本 周平 先生

国際教養大学 国際教養学部 国際教養学科 グローバル・スタディズ領域 助教 竹本 周平 先生

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国際関係論、国際安全保障

先生が目指すSDGs

メッセージ

国際関係には絶対的な正解は存在しません。国によって考え方も主張も大きく異なり、いわば国の数だけ正解があるのが国際関係の醍醐味です。国際関係に興味があるなら、まずはそのことを大前提として理解しておきましょう。日頃から、自分とは異なる背景を持つ人たちとの交流を持ち、世界史などの科目やさまざまな国際ニュースに触れ、多角的で広い視野を育てることが大切です。どの国にもそれぞれ特有の世界のとらえ方があることを踏まえて世界の情勢を知れば、国際関係のダイナミックな動きが見えてきます。

先生への質問

  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

国際教養大学に関心を持ったあなたは

国際教養大学の挑戦―それは、従来の日本の大学では実現が難しかった課題に向けて「国際教養」という新しい理念を掲げ、その特色を最大限に生かし、グローバル化が進む国際社会を舞台に存分に活躍できる優れた人材を養成することです。本学では斬新な教育プログラムに可能性を見い出した個性的な学生たちが、全国各地から集まっています。「ありきたりの大学生活では物足りない!」と考えているみなさん、「壮大な夢を抱く仲間たちとともに輝いてみたい!」と願うみなさんは、ぜひ一度本学を訪れてください。