グローバル化から見える、アメリカ政策と世界への影響

グローバル化から見える、アメリカ政策と世界への影響

貧困率を下げたグローバル化

現在のグローバル社会を政治学の観点から検証すると、世界で何が起きているか見えてきます。
グローバル化のメリットの一つは、良い商品が低価格になったことです。1982年に日本で販売されたパソコンは、すべて国内生産で価格は高く設定されていましたが、現在のパソコンは労働力の安い国で生産されており、価格は大幅に低下しています。これにより、新興国(途上国)の仕事が増えて世界の貧困率が減りました。新興国の中間層が収入を上げて、先進国の富裕層も利益を得る構造になっています。

反グローバルと大統領選

一方、グローバル化の不利益を被っているのが先進国の労働者です。仕事が新興国に流れて収入が減少しました。アメリカで反グローバルを訴えるのは一部の労働者ですが、この声が大統領選を大きく左右しています。
こうした労働者は例えば、ウィスコンシン、ミシガンといった4つの州に住んでおり、ラストベルトと呼ばれる脱工業化が進む地域に住んでいます。大統領選は、これらの州で勝つことが優位になる仕組み(制度)になっています。こうした制度的特徴の結果、共和党も民主党も、反グローバルを訴えることになり、誰が大統領になっても反グローバル、反自由貿易、反移民政策をとります。アメリカの一部の労働者の声が、政策を決定づけているのです。

日本への影響

アメリカは、反グローバル化政策と米中競争の激化の影響が混在する形で、中国への経済措置として中国製品の関税の引き上げと、その対象製品を拡大させています。特に、先端産業である半導体製品や、その製造装置に関しては、中国への輸出を厳しく制限し、それを同盟国である日本にも求めています。こうしたアメリカからの要求は、日本企業の大きな負担になっています。また、こうしたアメリカの政策の背景には、安全保障上の目的を実現するために、貿易政策を利用するといった経済安全保障の考えがあります。こうした経済と安全保障がより複雑に絡み合う状況は、国際社会の現状を複雑化しています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

埼玉大学 教養学部 教養学科 准教授 冨田 晃正 先生

埼玉大学 教養学部 教養学科 准教授 冨田 晃正 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

国際政治経済学

メッセージ

日本国民はこれまで、国や企業に守られてきましたが、経済成長が難しい今、これからは海外を視野に入れないと生き残るのは難しいでしょう。海外で活躍できるように今から準備しておきましょう。これからは否応なしに英語力が不可欠です。特に東南アジアは経済成長期にあり、注目されています。海外の成長企業は、必ずしも働き方改革やワークライフバランスといった、日本で現在言われているような状況とは異なる側面もあります。日本は海外と比べて特殊であり、海外の実態を把握しておくことは大切です。

埼玉大学に関心を持ったあなたは

埼玉大学は、総合大学として有為な人材を育成する、首都圏大学として社会とリンクし還元する、世界に開かれた大学として国際交流を推進する、の3つが特色です。TOEIC600点を目標に画期的な英語教育を実施しています。学生諸君が、高度な専門知識に加えて幅広い教養と国際感覚を持ち、社会に貢献することができる市民・職業人に成長できるよう、教育上のさまざまな工夫を施しています。