国際法は強制力のない不思議な法

国際法は強制力のない不思議な法

政府間の関係を定めた特殊な法

新聞やニュースなどで時々目にする「国際法」というのは、「国と国の関係を規律する法」です。「国と国」の関係というのは、具体的には「政府と政府」の関係を指し、例えば、日本政府とロシアや韓国の政府との間で争われている北方四島や竹島の領土問題などが国際法によって規律される問題ということになります。
世界には200近くの国がありますが、それらのすべての国を従わせる裁判所は存在しません。国際司法裁判所というものはありますが、紛争当事国の同意を得ずに強制的に裁判をすることは原則としてできませんので、国際司法裁判所は、普通に言う意味での裁判所とはかなり異なります。また、紛争当事国の同意を得て裁判を行い、判決を下しても、その判決の履行を強制することはできません。こうして考えてみると、国際社会というのは、ある意味で、かなりの無法地帯ですが、無法地帯であるからこそ、国際法の個々のルールを明確にして、政府間の交渉の中で粘り強く国際法の遵守を求めていくことが大切になります。

冷戦終了後、国際法も少しずつ変化

歴史を振り返ると、いつも、大きな戦争の終了は、国際社会の法秩序に大きな変化をもたらしてきました。第一次世界大戦の終了は、初めての普遍的な国際機関である国際連盟の結成につながり、初めての世界法廷として機能することを期待された常設国際司法裁判所(国際司法裁判所の前身)も設立されました。第二次世界大戦の終了後は、安全保障理事会に強力な軍事的権限を委ねることを特徴とする国際連合が発足しました。そして、東西冷戦の終了は、貿易紛争解決のための充実した手続きを持つ世界貿易機関(WTO)や、個人の戦争犯罪などを裁く国際刑事裁判所を発足させました。国際社会は、国際法秩序の構築に向けて一歩一歩動いています。現在の国際社会の基本的なあり方を理解し、それを批判的に検討するために、21世紀の国際社会を担う地球市民の一人としてぜひ国際法を学んでみてください。

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国際教養大学 国際教養学部 東アジア調査研究センター 准教授 豊田 哲也 先生

国際教養大学 国際教養学部 東アジア調査研究センター 准教授 豊田 哲也 先生

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メッセージ

グローバル化時代の共通語は英語です。例えば、インターネットは巨大な情報源ですが、その大部分は英語で書かれています。今後も日本国内で頑張ろうとする人にも、将来は国際社会で活躍しようとする人にも、英語で他者の考えを理解し、自身の考えを理解させる知的なコミュニケーション能力が大切です。しかし、英語を流暢に話せればよいというわけではありません。「英語『を』勉強する」のではなく、「英語『で』勉強する」という姿勢で、中身のある英語力を身につけましょう。英語を一つの道具として自分の世界を広げていってください。

国際教養大学に関心を持ったあなたは

国際教養大学の挑戦―それは、従来の日本の大学では実現が難しかった課題に向けて「国際教養」という新しい理念を掲げ、その特色を最大限に生かし、グローバル化が進む国際社会を舞台に存分に活躍できる優れた人材を養成することです。本学では斬新な教育プログラムに可能性を見い出した個性的な学生たちが、全国各地から集まっています。「ありきたりの大学生活では物足りない!」と考えているみなさん、「壮大な夢を抱く仲間たちとともに輝いてみたい!」と願うみなさんは、ぜひ一度本学を訪れてください。