防衛費の会計は、なぜ一般企業と違うのだろう?

防衛費の会計は、なぜ一般企業と違うのだろう?

防衛省と一般企業の価格決定方法は違う?

会社はマーケティングを行って製品の売値をいくらにすればよいか調べ、そこから欲しい利益を得るために、目標とする原価(材料代や働いている人の給料などの合計)まで製造原価を下げようと頑張っています。これはトヨタ自動車が開発した「原価企画」という考え方です。これに対して、国防を担う機関の防衛省では昔ながらの原価に利益と利子を加えて価格を決定してます。原価計算を行う際の基準である「原価計算基準」では、銀行などから借りたお金に支払う利子は原価ではないとされていますが、価格を構成する要素であるため、原価に加算する形で価格に含めているのです。

会計をアレンジした日本陸軍

また第一次大戦下では、大量の戦車や航空機などが製造されましたが、当時は不良品に対して無償で修理する責任制度がありませんでした。もし先に値段を決めると、後から製造原価が値上がりした時に質を下げて製造されて、修理代が追加で発生する恐れがあります。そこで製造にかかった費用は全額支払い、それに利益を加えて購入価格とする方法が考案されました。これは「原価加算契約」と言って、当時としては画期的な方法でした。それだけではなく、日本陸軍では予算が決まっていることから、実際に製品が出来上がった時に予算額を超えないようにするためのアレンジを加えました。メーカーが装備品の製造に慣れてくると製造にかかる原価も次第に下がります。その過去の実績を見て下がる分を予め見積った原価に、利益と利子を加えて価格を決めたのです。

歴史を知れば、会計学がよりわかる!

防衛費は国の予算で決まっているので、厳格に予算内に収めなければ法令違反になります。国防のための特殊な装備品を購入するという点で、防衛省は一般企業とは異なり、現在でも日本陸軍の価格決定方法が継承されています。会計の分野では、手順通りに行うだけではなく、このように会計の歴史をひも解いてみると、その会計方法が生まれた理由や経緯がわかり、より会計学の知識と理解が深まるはずです。

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秀明大学 総合経営学部 企業経営学科 准教授 本間 正人 先生

秀明大学 総合経営学部 企業経営学科 准教授 本間 正人 先生

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会計史、管理会計

メッセージ

会計の簿記というと難しいイメージがあるかもしれませんが、実際はとても単純です。帳簿の右と左の数字が同じになる、あるいは左がプラスになれば右がマイナス、左がマイナスになれば右がプラスになるという基本さえ抑えておけば決して難しいことはありません。簿記ができれば、会社の決算書の見方がわかるようになり、仕事の幅が広がります。営業担当ならば値引きが可能な範囲や、取引先の経営状況を判断できるようになり、一番利益が出るのはどれかという経営方針を決める中枢部門でも役に立つ知識を得ることができます。

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秀明大学の総合経営学部は、企業人として活躍できる能力を総合的に備えた人材を育成することを目的としています。幅広い進路に対応するため、「起業」「企業会計」「ビジネス」の3コースが設けられています。起業コースは、将来、会社を創業し自分で経営したいという進路を、企業会計コースは企業の経理部門や税理士等の専門職をめざす進路を、ビジネスコースは一般企業への就職のほか公務員や大学院進学者への多様な進路を歩んでいくコースです。