信頼関係を維持する会計
会計はすでにローマ時代から
古代ローマの時代、貴族の財産を管理する仕事が始まった頃から、会計が行われていたと言われています。15世紀のイタリアでは、お金の貸し借りにともなうトラブルを避けたり、組合企業の構成員に分配する利益を正しく計算したりするために、現代の会計で用いられている複式簿記がすでに生まれていました。会計は、仕事を依頼された者が、「こうしてきちんとやっていますから安心してください」と数字や文書で依頼者に示すことから始まったのです。親子や家族のように確たる信頼関係があれば、会計はいらないかもしれません。しかし、組織社会化が進展した現代では、きわめて大勢の人々が企業の活動に関与していますから、会計というお互いの信頼関係を維持するものがなければ、安心して経営を続けられないことになります。つまり会計は、企業の経営に不可欠な仕事となっているのです。さらに世界はまさに「グローバル化」しています。さまざまな国の多様な価値観を持つ人々が協働していますから、きちんとした取り決めの中で会計を行う必要があります。会計はもともと信頼関係が失われやすいことを前提に行われています。会計には、いかに信頼関係を維持して安心できる社会を築くかという大きな目的があるのです。
「会計」は失われやすい信頼関係を維持するもの
企業は、社会から信頼されなければ活動を続けることができません。一方、社会の多くの人たちは、企業が信頼できるかどうかを評価できなければ、その企業と信頼関係を築くことはできないでしょう。会計は、経営者が自分の企業が信頼できるかどうかを第三者に評価してもらうために、経営の成果を説明する行為なのです。つまり企業の経営者には、会計を行う責任(会計責任, accountability)があるのです。そして企業の経営者が適切に会計責任を果たしていくために、どのように会計を行えばよいかということを研究する学問が、会計学なのです。会計学は、一般的にイメージされている簿記や税務ばかりではないということです。
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