電車の乗り換え案内と数学の意外な関係
最短の経路はどうやって見つけるか
A駅からB駅まで電車で行くのに、ケータイなどの経路検索システムで調べると、すぐに最も早い経路、最も安い経路などを教えてくれます。この便利な仕組みを支えているのが数学の一分野「グラフ理論」なのです。
ただし、グラフといっても対象となるのは棒グラフや折れ線グラフなどではありません。グラフ理論が研究対象とするグラフとは、いくつかの「点」とそれらを結ぶ「線」によって構成される図形です。
グラフと所要時間から最短経路を突き止める
電車の路線図を見れば、出発地のA駅、目的地のB駅の間に、いくつかの経路があることがわかります。グラフで考えるなら、出発地といくつかの乗換駅、そして目的地が「点」であり、各点を結ぶ路線が「線」です。こうして電車の路線図から点と線を抜き出して作ったグラフの線上に、隣り合う駅間の所要時間を書きこんでいくと、ある手順(アルゴリズム)でA駅からB駅までの最短経路がわかるのです。所要時間に運賃のデータを加えれば、最も安い経路を導き出すこともできます。
グラフの性質を考える
点と線の数が増えていくとグラフは複雑になり、面白い性質を持つものが出てきます。例えば、5点からなるグラフを考えてみましょう。まず、平面上に5つの点を書きます。この5点のうち、2点を選んで線で結んでみます。2点を選ぶ組み合わせは10通りありますので、10本順番に線を描いてみましょう。線は曲がっても構いません。先に書いた線と交差しないように頑張って書いてみましょう。実はこの5点10線からなるグラフは、交差なしに平面上に書けないという性質をもちます。5点9線までは書けるけれど、最後の1本の線はどうしてもほかの線と交差してしまうのです。
グラフは2次元の平面だけではなく、3次元の空間でも考えることができます。空間に置かれたグラフはどのような性質を持つのかを考えていくと、柔らかい幾何学とも呼ばれる位相幾何学の世界につながっていくのです。
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