ロボットが「触った感じ」を伝えるには
人間に代わり活動するロボット
地震で倒壊した建物の中や、地滑りが起きたエリアなどで救助活動をするロボットの研究が進んでいます。電動ハンドやセンサを付けたロボットを、人間が遠隔から操作する仕組みです。ロボットの活動場所の状況を把握する際に、現状の視覚や聴覚に加えて、ロボットが何かに触れたときの「触覚(力覚)」の情報が得られれば、救助活動の精度は格段に向上します。そこで用いられるのが、「力覚フィードバック」という技術です。
機械的なハウリングを抑えろ!
ロボットに付けられたセンサが感知した力覚は、ネットワークを通じて操作する人間に伝えられますが、そこで問題になるのが機械的な「ハウリング」です。ネットワークでデータを送受信する際に発生する遅延(タイムラグ)によって、ほんのわずかな力覚がループしながら増幅してしまうのです。ロボットと人間との距離が遠くなるほどハウリングが増して、人間には大きな振動となって伝わります。
研究では、ハウリングを抑えるために2つの制御の組み合わせが考案されました。まずは粘性による安定化制御です。これは振動するものをジェルのようなネバネバしたものの中に入れることで、振動が抑えられたように感じられる仕掛けです。具体的にはロボットが動く量を、速度に比例するある一定の量だけ減らすことで粘性を生じさせます。もう1つは「QoS(Quality of Service)制御」です。人間が違和感を覚えない範囲で、ネットワークで送受信されるデータの優先順位を整理するなどして、高品質の力覚情報を安定して伝えられるようにします。
高度な作業の実現も
力覚フィードバックを用いた遠隔操作ロボットが実用化されれば、被災地のほかにも宇宙や深海といった、人間が入れないさまざまな場所での活躍が期待されます。さらに制御の技術を高めることで、何台ものロボットが物体を一緒に運んだり、手渡したりといった高度な作業の実現も視野に入れた研究が進んでいます。
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愛知産業大学 経営学部 総合経営学科 教授 石橋 豊 先生
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