観光CMで伝える、そこにしかない「本物」
観光をマネジメントする
以前、「京都の祇園で舞妓さんと無理やり写真を撮ったり着物を引っ張ったりする観光客がいて迷惑」という報道がありました。しかし、京都の観光CMには必ずといっていいほど舞妓さんが出てきますから、観光客が舞妓さんを見たいと望むのは当然でしょう。また、地元出身の芸能人を起用してお金をかけた観光CMを作り、100万回の再生回数を記録したと喜ぶ地方自治体もあります。しかし、それは成功といえるでしょうか?
観光CMの目的は、「行ってみたい」という意欲を起こさせることです。そして重要なのが、観光をマネジメントするという考え方です。今まで人が訪れず、人口減少さえ起こっている地域に人を呼び、ひいては地域を活性化させるのです。映像には、人の行動を促す力があります。人を誘致したいスポットに誘致する。そのためには行政などとも連携し、それぞれの地域が考える目的や、その効果まで見据えた観光CMの制作が必要です。
「体験する」がポイント
今の観光は、訪れた先で何かをするといった体験がメインです。例えばスペインのバルセロナの観光CMでは、有名なサグラダファミリアはほんの一瞬しか出てこず、あとは近郊の田舎の風景と、人々が楽しんで何かをしている映像が主体です。京都周辺なら、観光客があまり足を延ばさない京都北部の福知山や兵庫県の香住(かすみ)で、自然の中のアクティビティや田舎暮らしを楽しむ様子を映像で紹介します。それは、体験したい人の心に響き、実際に現地へ向かう人も出てくるでしょう。その結果、京都市内にあふれる観光客を分散できれば、観光客も住民も満足できます。
そこにしかない「本物」を伝える
現代はリアリティが求められ、そこに価値をおく時代です。観光CMも同様に、その土地でしか味わえない地酒や食べ物、そしてその土地が持つストーリーといった「本物」が求められています。地域の価値を、正直にわかりやすく伝えるものとして、映像はインパクトのあるツールとして活用することができるのです。
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先生情報 / 大学情報
和歌山大学 観光学部 観光学科 教授 木川 剛志 先生
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