課題解決をめざす「コミュニケーションデザイン」とは?

課題解決をめざす「コミュニケーションデザイン」とは?

デザインで人の心を動かし、社会課題を解決

アートや広告の世界で、人と人とのコミュニケーションを生み出す「コミュニケーションデザイン」が注目されています。見た目の洗練だけを求めるのではなく、社会や環境、企業等のコミュニケーションに内在する今日的な課題の解決を目的として作品を作るところが特徴です。
情報やモノがあふれる現代では、コミュニケーションを生まないデザインは人の心に残らないと考えられています。クリエイターやデザイナーには、人の心を動かし、暮らしや環境、社会に影響を与えるコミュニケーションデザインの知識やスキルが求められているのです。

「なぜその作品なのか」を言葉で伝える

ある美術大学では、地域や社会の課題を見つけることからはじめて、具体的なデザイン解決策を立てて課題制作を行うコミュニケーションデザインの演習が行われています。タイポグラフィ、パッケージ、ポスター、ウェブ、イラストレーション、3DCG、映像など、いろいろな表現の方法も学びます。デザインの現場では、「なぜその形・方法を選んだのか」「どんなコミュニケーションを生み出せるのか」を言葉にして人に伝えることが必要になるため、グループワーク、企画書作り、プレゼンテーションなども大切な学びです。

自然と人の関係を見つめ直す写真作品

写真によって、見る人に気づきや問題意識を与えようとする作品もあります。ある写真家は秋田県の一級河川「玉川」を主題に撮影を続けています。玉川は、源流付近で強酸性の温泉が噴き出して流れこむため、生物は住めず、流域で農作物を育てることもできませんでした。そこで人間が酸性度を薄めるため玉川の水を田沢湖にひきこみ、湖の魚類を死滅させた歴史もあります。現在は中和施設で処理されるため、下流では生物が住み、生活用水として使われています。こうした経緯をもつ玉川を撮影した写真作品は、写真集や展示などのコミュニケーションを通じて、身近な自然の美しさを伝えるだけでなく、人と自然の共生について見つめ直そうと提起しているのです。

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先生情報 / 大学情報

秋田公立美術大学 美術学部 美術学科 コミュニケーションデザイン専攻 助教 草彅 裕 先生

秋田公立美術大学 美術学部 美術学科 コミュニケーションデザイン専攻 助教 草彅 裕 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

写真学、コミュニケーションデザイン

先生が目指すSDGs

メッセージ

写真は言葉が通じなくても視覚によって情報を伝えることができるため、今や世界中でコミュニケーションツールのために機能しています。心に瞬間的に訴える写真もあれば、時間をかけて染み込むように残る写真もあります。そのような写真は人の行動を変え、あるいはたった一枚の写真が人生を変える力を持つかもしれません。写真が限りなく身近な存在となった現代だからこそ、「今、写真にできることは何か」を追求することで、新たな視点とコミュニケーションが生まれ、様々な課題を見つめ直し解決するための可能性が広がるのです。

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秋田公立美術大学は、旧来の美術教育の概念にとらわれない新しい価値観に基づいた美術大学として、2023年に開学10周年を迎えました。
「新しい芸術領域を創造し、挑戦する大学」「秋田の伝統・文化をいかし発展させる大学」「秋田から世界へ発信するグローバル人材を育成する大学」「まちづくりに貢献し、地域社会とともに歩む大学」の4つを基本理念とし、素材や技法に依らない新しい領域を探求する5つの専攻と、それらを横断的に学び多様な価値を共有しつつ、専門能力を高めていくユニークな教育システムを有しています。