「コミュニケーションで、増加する高齢者虐待を防止する」
年々増える高齢者への虐待件数
介護施設で過ごす高齢者は、施設の職員によるケアを受けながら生活をしています。しかし、最近高齢者施設において職員による高齢者への虐待が発生しており、高齢者の尊厳を守るための組織づくりが施設に求められています。最新のデータでは、高齢者への虐待は、1年間で約856件発生しています。虐待は以前からあった問題ですが、2005年に「高齢者虐待防止法」という法律が定められたことをきっかけに通報件数が増えました。そこに人手不足によって職員が疲弊する現状が重なり、虐待の報告件数が増加しています。
事例漫画を用いた虐待予防研修プログラム
虐待をしてしまった職員の多くは、好んで暴力を振るうわけではありません。1人で数十人の高齢者をケアする、夜間勤務における強いストレスなど、追い詰めらることによって生じる場合も多いです。虐待を防ぐためには制度そのものを変える必要がありますが、制度はすぐに変わるものではありません。そこでまず現場の環境改善のための、虐待予防のプログラムが開発されています。プログラムは、優れた実践で知られる多くの介護施設の良い取り組みを参考に制作されています。漫画仕立てにすることで外国人や文字を読むことが苦手な職員も受け入れやすくなり、広く虐待予防に役立ちます。
スポーツと福祉の現場との共通点
良いケアを実践している施設では、まず「高齢者の尊厳を守る」という組織の目的が職員間で一致しています。また、その目的を達成するために一人一人が組織に貢献しようという意欲を持ち、職員間の対話も頻繁に行なわれています。実は、福祉現場での環境はスポーツの世界と似ています。スポーツでは、「試合に勝つ」という目的を共有し、一人一人がチームに貢献し、監督やコーチが選手たちとうまくコミュニケーションをとります。福祉の世界は「試合」ではありませんが、高齢者の幸せな暮らしを守るという目的をメンバーが共有ししっかりコミュニケーションをとることから良いサービスを作り出すことが出来るのです。
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立正大学 社会福祉学部 社会福祉学科 教授 土屋 典子 先生
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