動物はそれを「幸せ」と感じているのか?

動物はそれを「幸せ」と感じているのか?

広がる「アニマルウェルフェア」

動物園や水族館で飼育される動物、そして家畜として飼養される動物のどちらに対しても、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」という考え方が広まりつつあります。昔から「動物愛護」という概念はありましたが、問題とされるのはあくまで人間の目に「動物が幸せに見えるかどうか」でした。その考え方からさらに進んで、飼養や管理状況が本当に「動物にとって快適なのか」を追究するのがアニマルウェルフェアであり、科学的なエビデンスをもってそれを実証していくことが求められています。

動物のストレスを軽減する必要性

動物がストレスを感じているかどうかの指標はいくつかあります。例えば、自傷行為や同じ場所をぐるぐる歩き回るなどの異常行動もその1つです。動物園では、展示スペースを単調なものから自然状態に近い複雑な構成にするなどして動物が飽きないような工夫をしています。
一方、畜産業では、動物を大きく育てることが重要視されて、動物を「幸せに育てる」ことは後回しになる傾向がありました。しかし、どんな動物も「幸せに育てる」ことが大切だと考えるのが世界的な流れであり、それが生産性の向上にもつながることが明らかになれば、畜産のアニマルウェルフェアもより進むと考えられます。

人間と動物の新しい関わり方へ

昔の養鶏では、ニワトリを狭いケージに何羽もまとめて飼養するのが当たり前でしたが、1羽ずつのスペースを確保して運動できる環境にしたほうが健康寿命は延びることがわかっています。また、抗生物質を与えることで病気になりにくくしていたものを、自然由来のエサを使うなどして、動物が本来もつ免疫力を高めて抗生物質を減らす試みも増えています。
動物にとっての幸せを科学的に調べることは、動物園の運営でも畜産業でも、これからより重要になっていくでしょう。こうした研究がさらに進めば、ペットと飼い主との相性を分析するなど、動物との関わり方を大きく変える将来につながるかもしれません。

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石川県立大学 生物資源環境学部 生産科学科 教授 平山 琢二 先生

石川県立大学 生物資源環境学部 生産科学科 教授 平山 琢二 先生

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家畜生産学

メッセージ

高校生のうちは、今しかできないことを一生懸命楽しむのが一番です。高校の段階で進路を決めておくのも良いですが、必ずしもそうでなくても良いのです。大学に入ってさまざまなものに触れてみてから、自分の進みたい道をじっくり考えるというやり方もあるでしょう。もちろん、ひとまずは何かをやってみることが大事です。それによって、これまで自分の知らなかった世界が見えてきますし、そこから興味・関心が深まっていくことにもつながります。

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