デジタル社会に求められる「消費者法」の役割とは?
デジタル社会における個人データの価値
あなたが普段使っている無料のSNSやゲームアプリは、本当に無料でしょうか。実は多くのサービスは、ユーザー(消費者)の個人情報を集めて、広告やマーケティングに活用することで収益につながっています。つまり、無料サービスでは個人データがお金と同じ価値があるとみなされているのです。例えば、ユーザーの検索履歴や行動履歴などの情報をもとにパーソナライズされた広告を表示させる仕組みは、現在では一般的になっています。便利な反面、知らないうちに自分の情報が利用されている怖さも感じます。しかし日本では、消費者の個人データ活用について、十分に法整備されているとは言えません。
消費者と企業の情報格差
民法上、契約する両者は対等だと考えられています。しかし、消費者と企業の間には情報の量や交渉力に大きな差があります。特にデジタル取引では、その格差がより明確だと言えるでしょう。例えばオンラインショッピングでは、商品の実物を見られず、販売者とも直接話さないので、限られた情報を頼りに購入しなければなりません。また、日本では個人データの利用方法について、企業側の情報開示が不透明なこともあります。こうした中で消費者の権利をどう守るのかが、消費者法の重要な役割です。
日本とEUの消費者法の違い
日本の消費者法は主に「消費者契約法」「特定商取引法」「景品表示法」の3つです。これらは特定の取引方法や商品・サービスの分野ごとに、対症療法的に整備され、あるいは改正されてきた経緯があります。しかし、次々と新しい商品やサービス、取引方法が登場する中で、その都度個別の法律を作ったり改正したりするのは大変です。一方、EUの消費者法は取引方法ごとではなく、消費者取引一般に適用される包括的なルールを設けています。こうしたルールがあれば、新しい商品やサービス、取引方法が登場しても柔軟に対応できます。 今後は日本でも、デジタル取引の分野で分野横断的で包括的な消費者保護のルール作りが求められるでしょう。
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龍谷大学 法学部 法律学科 教授 カライスコス アントニオス 先生
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