講義No.14094 法学

デジタル社会に求められる「消費者法」の役割とは?

デジタル社会に求められる「消費者法」の役割とは?

デジタル社会における個人データの価値

あなたが普段使っている無料のSNSやゲームアプリは、本当に無料でしょうか。実は多くのサービスは、ユーザー(消費者)の個人情報を集めて、広告やマーケティングに活用することで収益につながっています。つまり、無料サービスでは個人データがお金と同じ価値があるとみなされているのです。例えば、ユーザーの検索履歴や行動履歴などの情報をもとにパーソナライズされた広告を表示させる仕組みは、現在では一般的になっています。便利な反面、知らないうちに自分の情報が利用されている怖さも感じます。しかし日本では、消費者の個人データ活用について、十分に法整備されているとは言えません。

消費者と企業の情報格差

民法上、契約する両者は対等だと考えられています。しかし、消費者と企業の間には情報の量や交渉力に大きな差があります。特にデジタル取引では、その格差がより明確だと言えるでしょう。例えばオンラインショッピングでは、商品の実物を見られず、販売者とも直接話さないので、限られた情報を頼りに購入しなければなりません。また、日本では個人データの利用方法について、企業側の情報開示が不透明なこともあります。こうした中で消費者の権利をどう守るのかが、消費者法の重要な役割です。

日本とEUの消費者法の違い

日本の消費者法は主に「消費者契約法」「特定商取引法」「景品表示法」の3つです。これらは特定の取引方法や商品・サービスの分野ごとに、対症療法的に整備され、あるいは改正されてきた経緯があります。しかし、次々と新しい商品やサービス、取引方法が登場する中で、その都度個別の法律を作ったり改正したりするのは大変です。一方、EUの消費者法は取引方法ごとではなく、消費者取引一般に適用される包括的なルールを設けています。こうしたルールがあれば、新しい商品やサービス、取引方法が登場しても柔軟に対応できます。 今後は日本でも、デジタル取引の分野で分野横断的で包括的な消費者保護のルール作りが求められるでしょう。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

龍谷大学 法学部 法律学科 教授 カライスコス アントニオス 先生

龍谷大学 法学部 法律学科 教授 カライスコス アントニオス 先生

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民法、消費者法

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メッセージ

スマホのアプリの多くは、なぜ無料で使えるのでしょうか。普段の生活の中でこうしたちょっとした疑問が浮かんだら、ぜひ立ち止まって考えてみてください。そうした好奇心を常に持ち続けていれば、自分は将来何がしたいのか、どんな勉強がしたいのかが見えてくるはずです。そして、幅広い知識を身につけておくと、将来どんな道に進んでも無駄にはなりません。今の自分には関係ないと思えることでも、10~20年後に想定外のところで役立つことがあります。幅広く学ぶことを大切にしてください。

先生への質問

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あなただけの世界から、私たちを想う世界へ

あらゆる「壁」や「違い」を乗り越えるために、「まごころ」を持ち、「人間・社会・自然」について深く考える人を育む。それが、龍谷大学の教育のあり方です。自分自身を省み、人の痛みに感応して、他者を受け容れ理解する力を持つ。人類が直面するリアルな課題と真摯に向き合う。そして様々な学びを通じて本質を見極める目を養い、自らの可能性を広げていきます。