講義No.14162 経営学・商学

ジェンダー平等視点に無自覚な広告が、ブランドの危機を引き起こす

ジェンダー平等視点に無自覚な広告が、ブランドの危機を引き起こす

炎上からの不買とブランド価値毀損

以前、ある企業が女性用衣料のプロモーション活動で、SNSの公式アカウントに複数のイラストを投稿しました。ところがそれらは性的な関心を喚起する際に多用されるテイストであったことから、SNSで炎上し不買運動に繋がりました。これらのイラストは、その商品を〈着る側〉ではなく〈性的に視る側〉の視点に立ったものだと、少なからぬ人から受け止められたのです。その結果、そのプロモーション中止と謝罪に追い込まれ、企業のブランド価値を損なう結果となりました。

ジェンダー平等視点への無自覚さ

先進諸国では、このように性的表現を用いた画像や動画は、見たい意思を持つ成人だけがアクセスできるという、厳格なゾーニング(区分け)が行われています。一方日本では、見たくない人や子どもの目にも入ってしまう環境が至るところにあります。その結果、マーケティングのプロモーション活動でも、ジェンダー平等視点に欠いた表現が無自覚に採用されやすく、炎上を引き起こしブランド価値を損なってしまうのです。
この背景には、意思決定層がマジョリティに偏りやすい日本の組織特性が挙げられます。日本でのマジョリティとは、男性、日本国籍、日本語が第一言語、健常者といった、いわば「自身の属性では損しづらい」人々です。もし意思決定層に多様性があれば、プロモーションが提案された時点で「まずいのでは」という声が内部で挙げやすくなります。マイノリティ性を持つメンバーが3割を超えないと反対意見を出しづらいと言われていますが、日本の組織はその割合には程遠い状況です。

マーケティングとジェンダー平等視点

企業活動が国際化する中では、ジェンダー平等視点を欠くことが経営上のリスクとなります。広告におけるジェンダー平等視点は、これまで社会学やジェンダー論の分野で議論されてきましたが、こうしたことからマーケティングの分野でも重要になるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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龍谷大学 経営学部 商学科 ※2025年4月新設 教授 遠藤 明子 先生

龍谷大学 経営学部 商学科 ※2025年4月新設 教授 遠藤 明子 先生

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メッセージ

ジェンダー平等について大学の授業で取り上げる際には、様々な立場を意識するように心がけています。もしかしたら男性にとっては、これまでの立場が崩されるように感じられるかもしれません。しかし、ジェンダー平等というのは、決して誰かを引きずり下ろすのではなく、互いを認め合って、互いが生きやすくするための視点だと考えています。学問は、人の心を自由にするものです。多様性の問題も、自分自身がより自由になり、生きやすくするものだと信じて、多くの人に学んでほしいと思っています。

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あらゆる「壁」や「違い」を乗り越えるために、「まごころ」を持ち、「人間・社会・自然」について深く考える人を育む。それが、龍谷大学の教育のあり方です。自分自身を省み、人の痛みに感応して、他者を受け容れ理解する力を持つ。人類が直面するリアルな課題と真摯に向き合う。そして様々な学びを通じて本質を見極める目を養い、自らの可能性を広げていきます。