ジェンダー平等視点に無自覚な広告が、ブランドの危機を引き起こす
炎上からの不買とブランド価値毀損
以前、ある企業が女性用衣料のプロモーション活動で、SNSの公式アカウントに複数のイラストを投稿しました。ところがそれらは性的な関心を喚起する際に多用されるテイストであったことから、SNSで炎上し不買運動に繋がりました。これらのイラストは、その商品を〈着る側〉ではなく〈性的に視る側〉の視点に立ったものだと、少なからぬ人から受け止められたのです。その結果、そのプロモーション中止と謝罪に追い込まれ、企業のブランド価値を損なう結果となりました。
ジェンダー平等視点への無自覚さ
先進諸国では、このように性的表現を用いた画像や動画は、見たい意思を持つ成人だけがアクセスできるという、厳格なゾーニング(区分け)が行われています。一方日本では、見たくない人や子どもの目にも入ってしまう環境が至るところにあります。その結果、マーケティングのプロモーション活動でも、ジェンダー平等視点に欠いた表現が無自覚に採用されやすく、炎上を引き起こしブランド価値を損なってしまうのです。
この背景には、意思決定層がマジョリティに偏りやすい日本の組織特性が挙げられます。日本でのマジョリティとは、男性、日本国籍、日本語が第一言語、健常者といった、いわば「自身の属性では損しづらい」人々です。もし意思決定層に多様性があれば、プロモーションが提案された時点で「まずいのでは」という声が内部で挙げやすくなります。マイノリティ性を持つメンバーが3割を超えないと反対意見を出しづらいと言われていますが、日本の組織はその割合には程遠い状況です。
マーケティングとジェンダー平等視点
企業活動が国際化する中では、ジェンダー平等視点を欠くことが経営上のリスクとなります。広告におけるジェンダー平等視点は、これまで社会学やジェンダー論の分野で議論されてきましたが、こうしたことからマーケティングの分野でも重要になるのです。
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