認知スタイルでわかる、自分に合った職業や生き方
覚え方の個人差
誰もが勉強ができるようになる学習法というのは残念ながら存在しておらず、効果的な方法は人によって異なります。例えば、単語を覚える際に、アルファベットの並びを唱えて覚える人もいれば、単語を映像的なイメージで覚える人もいるでしょう。これらの違いは、脳の個性によるものです。情報を受け取り、記憶し、表現する能力を認知と呼び、その個々の違いを「認知スタイル」と呼びます。
3つの認知スタイル
認知を行う際、聴覚からの情報処理が得意な人は「言語思考型」です。専門職に就く人の認知スタイルの傾向を調査したところ、言語思考型の人は弁護士や翻訳家、アナウンサーなど、言葉を操りコミュニケーションが重要な職種に多くみられました。一方で、視覚からの情報処理が得意な人は2タイプに分かれ、その1つが「物体思考型」です。物体思考型は、物体の色や形といった映像的な処理が得意で、写真のような鮮明な記憶を持ち、考え事をする時には絵や映像といったイメージを使うのが特徴です。もう1つは、空間的な情報をとらえるのが得意な「空間視覚思考型」です。頭の中で立体の図形をイメージして回転させることができ、地図を見れば自分の場所が把握できる能力があります。物体思考型にはデザイナーや芸術家が、空間視覚思考型は数学や工学の研究者やプログラマーが多くいます。
認知スタイルの把握
これまで、認知スタイルの診断は心理療法などでカウンセラーの経験に基づいて行われていましたが、より簡易で均一に判断するために、数量的に評価できる質問紙が開発されました。いくつかの質問に答えることで、各タイプの得点を算出して認知スタイルの傾向を分析するものです。心理療法においての認知スタイルの把握は、例えば言語思考型の人なら論理的な説明を用いた方が効果的だという判断につながります。さらに、個人が自分の認知スタイルの傾向を把握できれば、将来の職業の選択や、その人らしい生き方の手助けにつながるはずです。
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岩手大学 人文社会科学部 人間文化課程 教授 川原 正廣 先生
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