家畜を守れ! 病原菌の特性を利用した手軽な検査法の開発

病原菌検査法の効率を高める
畜産業を営む人がいることで、私たちは乳製品や肉、卵などを食することができます。その畜産業者が最も困るのは、家畜が感染症にかかることです。
代表的な病原菌は、下痢を引き起こし、死に至ることもあるサルモネラです。検査では糞便からサルモネラを分離しますが、さまざまな細菌がいる糞便からサルモネラを見つけるには複数種の培地を使う必要があり、時間がかかりました。そこで、「サルモネラ菌は遊走する」という特性を利用して、検体を接種した場所から拡がって増殖する様子が色の変化で判別できる培地が開発されています。以来、検査にかかる手間が大幅に短縮されました。
未だ手間がかかる検査が多い
動物の感染症は多種多様です。他に問題となっている感染症としてヨーネ病があります。ヨーネ菌は牛の腸管でゆっくりと増殖し、感染から数年を経て慢性の下痢をおこします。有効な治療法がなく、年間千頭以上が法律に基づいて殺処分されています。感染初期の段階で効率的に摘発することが難しく、農場を清浄化するためには長期間の対策が必要です。
その他の感染症として、病原体を持った蚊に刺されることによって感染するアカバネ病は流産を起こします。寄生虫である肝蛭は中間宿主の小さな巻貝から出て水草に付着し、それを食べた牛や羊に肝障害を起こします。感染対策は病原体によって大きく異なり、検査には時間と手間がかかります。もっと簡易的に検査できれば、予算も時間も縮小できます。
現場にあわせた研究も不可欠
農場では感染した家畜の隔離や消毒といった、被害を拡大させない対策が必要です。しかし、畜舎で飼う、放牧するといった飼育スタイルや地域環境の違い、さらに夏と冬でも消毒薬の効果に違いが出る等、農場によって対応が異なり、一律化できない課題があります。それぞれの状況で有効であった対策法を情報発信し、診療獣医師等と協力して個別に問題解決していくことも大切です。こうした感染症対策を確立することが家畜を守り、日本の食を守ることにもつながるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
