講義No.14410 看護学 医学

看護師が未来の防災リーダーに 災害看護学で避難所運営を学ぶ

看護師が未来の防災リーダーに 災害看護学で避難所運営を学ぶ

避難所の運営

災害が発生して自宅での生活が困難になった時に、一定の期間を過ごす場所として設けられるのが避難所です。多くは学校や公民館などが使用され、主に市町村が開設や運営を担います。近年では、災害発生により被災地などに派遣される看護師は、避難所において被災者の看護だけでなく避難所の生活環境の調整など、避難所運営に携わるようになっています。

健康被害を起こさない

避難所での看護師の役割で最も大切なことは、健康被害を起こさない事です。そのため、就寝環境の整備のほか、性被害防止を含めたプライバシー保護など室内環境の整備も大切です。また、高齢者や身障者など、より支援が必要な災害要配慮者への対応も求められます。さらに、近年では感染症対策が重要な課題になりました。狭い避難所の中で、感染兆候のある人たちをどのように隔離するかは非常に難しい問題です。看護師は医学的な知識を持つだけでなく、避難者の声を吸い上げやすい存在であるため、課題点をいち早く把握して、多職種連携する中心的な役割が求められています。

演習の重要性

1995年の阪神・淡路大震災を契機に、文部科学省の方針として看護学科に「災害看護学」が導入されました。災害看護学の授業では、避難所の模擬運営などの「演習」が重視されています。なぜなら、一つの正解を決めてしまうと、無理やりにでも従おうとしがちになり、地域性を考慮する柔軟性が失われる傾向があるからです。そのため教科書で学ぶ座学だけでなく実際に体を動かしたり、机上演習などを通して思考や判断力を養う演習が重視されているのです。
一方で、災害看護学の専門教員が不足している現状があり、専門知識を十分教えられていないという課題もあります。そこで、実際の看護学演習における学生の動きや考え方などをデータ化して、今後の災害看護学で強化すべき点の分析が進められています。
南海トラフ地震の発生予想や地球温暖化による水害も多発する日本では、災害看護学の強化と実践がますます重要になっています。

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神奈川工科大学 健康医療科学部 看護学科 准教授 奈良 唯唯子 先生

神奈川工科大学健康医療科学部 看護学科 准教授奈良 唯唯子 先生

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看護学

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メッセージ

最近では、災害支援ナースやDMAT(災害派遣医療チーム)の存在が広く知られるようになり、災害支援に関わりたいという夢を持って看護学をめざす学生が増えています。災害発生時、看護師はDMATの一員や災害支援ナースなど、様々な場所で活動します。災害現場で活動するためには、普段の医療や看護を基に専門的な知識・技術が求められます。しかし、災害は、いつどこで起こるかわかりません。そのため、看護師の誰もが災害支援を学ぶ必要があり、災害看護学を学ぶことで、将来の災害対応に重要な役割を果たすことになるでしょう。

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