看護師が未来の防災リーダーに 災害看護学で避難所運営を学ぶ
避難所の運営
災害が発生して自宅での生活が困難になった時に、一定の期間を過ごす場所として設けられるのが避難所です。多くは学校や公民館などが使用され、主に市町村が開設や運営を担います。近年では、災害発生により被災地などに派遣される看護師は、避難所において被災者の看護だけでなく避難所の生活環境の調整など、避難所運営に携わるようになっています。
健康被害を起こさない
避難所での看護師の役割で最も大切なことは、健康被害を起こさない事です。そのため、就寝環境の整備のほか、性被害防止を含めたプライバシー保護など室内環境の整備も大切です。また、高齢者や身障者など、より支援が必要な災害要配慮者への対応も求められます。さらに、近年では感染症対策が重要な課題になりました。狭い避難所の中で、感染兆候のある人たちをどのように隔離するかは非常に難しい問題です。看護師は医学的な知識を持つだけでなく、避難者の声を吸い上げやすい存在であるため、課題点をいち早く把握して、多職種連携する中心的な役割が求められています。
演習の重要性
1995年の阪神・淡路大震災を契機に、文部科学省の方針として看護学科に「災害看護学」が導入されました。災害看護学の授業では、避難所の模擬運営などの「演習」が重視されています。なぜなら、一つの正解を決めてしまうと、無理やりにでも従おうとしがちになり、地域性を考慮する柔軟性が失われる傾向があるからです。そのため教科書で学ぶ座学だけでなく実際に体を動かしたり、机上演習などを通して思考や判断力を養う演習が重視されているのです。
一方で、災害看護学の専門教員が不足している現状があり、専門知識を十分教えられていないという課題もあります。そこで、実際の看護学演習における学生の動きや考え方などをデータ化して、今後の災害看護学で強化すべき点の分析が進められています。
南海トラフ地震の発生予想や地球温暖化による水害も多発する日本では、災害看護学の強化と実践がますます重要になっています。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。