愛着の形成・修復にメンタライジングで取り組む
心の援助と研究の循環を通して発展する臨床心理学
臨床心理学は心の援助という実践と研究の循環を通して発展してきました。臨床心理学にも色々な立場がありますが、その一つに、心の問題をその人が育つ過程で被った心の傷つきと結びつけて理解し、その人自身が傷つきとそれがもたらす影響に気づき、対処できるようになるのを援助するというものがあります。
「愛着」と心の傷つきがもたらす問題
「愛着」とは乳幼児や子どもが不安にさいなまれた時に、保護してくれる親や大人に近接することで安心を得ようとする行動や心の働きのことです。健康な育ちでは子どもがしぐさや言葉で助けを求め、親や大人は子どものサインを敏感にキャッチし適切に応答することで安心が得られ、子どもは親や大人を頼りにできることを学び、自分でも少しづつ不安に対処できるようになります。しかし、不安に気づいてもらうことすらなかったり、虐待を受けるなどして、親や大人を頼ることは無駄で危険なことと学んだ子どもは、不安に自己流に不適切に対処するしかなく、それがまた不安や恐怖を強めるという悪循環に陥りやすいのです。「愛着」の形成不全がもたらす心の傷は癒されないまま残り、学校での問題行動や友人関係の持ちづらさ、大人になっても自分に対する否定的な感情や抑うつをはじめとする様々な心の悩みを引き起こすことがあります。
メンタライジングを育てる心の援助アプローチ
メンタライジングとは、人の言動の背景にどのような気持ちや考えがあるのかを想像する心の働きです。メンタライジングは子どもが親や大人から心をメンタライズしてもらうことで育つものですから、愛着に傷つきを抱える人は自分の心をメンタライズすることが困難で、自分の気持ちに気づかず衝動的に行動しがちです。このような方への心の援助では、本人に深く共感しつつ共に心を探索し、メンタライズする力を少しづつ育てていくことを目指します。他者に理解される経験を通して他者を頼りにできることを学んでもらうことで、不安が低減され、対処力も高まるのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。