「データ」は誰のもの? 情報通信の過去と未来を考える
情報通信の歴史
私たちがデジタルデバイスを使って、いつでもどこでもサービスを利用でき、他人と交流できるようになった背景には、情報通信産業の発展の歴史があります。現在のパソコンが生まれる前には、1960年代にIBMが開発した巨大なコンピュータシステムがあります。大型の端末を複数の人でシェアする時代から、「18カ月で集積度が2倍」というハイペースでの半導体チップの発展によって小型化が進み、パソコンは個人が所有するものになります。その後はハイパーテキストやワールドワイドウェブといった技術が開発され、あらゆるコンテンツがインターネットの中でつながる時代を迎えます。
組織とデータ
1995年以降はYahooやGoogleといったインターネット広告ビジネスが台頭し、その期待が頂点に達して弾けた後に訪れたのが「web2.0」の時代です。SNSのように、サービスの提供者はプラットフォームを提供して、ユーザーがコンテンツをつくるというモデルが主流になります。これにより「GAFA」と呼ばれる巨大プラットフォーマーが市場を独占すると、ユーザーの情報が企業に吸い上げられる「監視資本主義」が指摘されるようになります。また、データを経済的な価値を持つ資源と捉えるアメリカ型、個人の信用度をスコア化して国民の管理に利用する中国型、個人データを尊重し保護しようとするヨーロッパ型など、国家とデータの関係にもさまざまな変化が生じました。
web3.0の可能性
近年、注目を集めているのが「web3.0」です。ブロックチェーンという、低コストで改ざん不能、かつ透明性の高いデータ運用の仕組みによって、個人が組織に頼ることなくデータの管理や運用ができるようになることが期待されています。ほかにも、爆発的なスピードで実用性を増している生成AIも、情報通信の未来を大きく変える可能性を秘めています。このように、技術やビジネスモデル、国家といった多様な視点から分析することで、人間と情報通信のあるべき姿を考えることができるのです。
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武庫川女子大学 経営学部 経営学科 教授 福井 誠 先生
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