アスリートの体重管理に欠かせない身体組成評価

アスリートの体重管理に欠かせない身体組成評価

太りやすいアスリートも

アスリートの中にも、体質的に太りやすい人はいます。特に体操や新体操などの審美系のスポーツではより体重のコントロールが重要になりますが、太りやすいアスリートにとって体重管理は強いストレスになり、競技に悪影響を及ぼすこともあります。体重を落とすためには脂肪を燃焼させることが有効です。人間の身体組成は脂肪と除脂肪に分けられます。除脂肪は筋肉や血液、骨格といった健康に直結する要素で構成されているため、体重を落とす際には除脂肪を維持しながら、脂肪を燃焼させる必要があります。

正しい体重コントロール

部活動でも体重を落とすためにさまざまなトレーニングが行われていますが、誤った方法も見受けられます。例えば、サウナスーツのような減量着を着て走り込む取り組みがその一例です。この取り組みでは汗、つまり水分を排出するため体重は減りますが、多くの水分が排出されることで脱水症状を引き起こすことがあります。ある実験で、同じトレーニングをサウナスーツ着用と通気性の良いTシャツ・短パン着用でそれぞれ行い、一定の脂肪が燃焼するまでの時間を測りました。Tシャツ・短パン条件はサウナスーツ条件に比べて10分程度長く時間がかかりました。言い換えれば、わずか10分程度長く運動するだけで、脱水症状を避けながら同じ効果が得られることがわかったのです。

身体組成を正しく測る

こうした実験では、正確に測定をすることが不可欠です。例えば、身体に微弱な電流を流して体脂肪率を測定する「インピーダンス法」では、発汗を伴うような運動直後で測定すると、身体の電気抵抗が体温上昇の影響を受けて減少し、体脂肪率が実際よりも低く出てしまいます。また、運動中の酸素摂取量を測定する場合は、測定機器が正しく酸素濃度を測定できているかを事前に確認します。このように、人間の身体組成や脂肪燃焼、代謝といった生体の反応を正しく測る技術は、スポーツの世界だけでなく、健康維持においても不可欠なのです。

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武庫川女子大学 健康・スポーツ科学部 健康・スポーツ科学科 教授 渡邊 完児 先生

武庫川女子大学 健康・スポーツ科学部 健康・スポーツ科学科 教授 渡邊 完児 先生

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運動生理学

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メッセージ

本学は競技クラブが盛んで、また健康・スポーツ科学部はこれまで中学校・高校などの保健体育の教員を数多く輩出しており、スポーツ・保健体育教育の分野においては老舗といえます。また、近年では運動部員以外の一般の学生も多く入学してくるようになりました。アスリート並みの運動能力がなくても、さまざまな理由でスポーツや運動に興味をもち、学びたいという意欲をもった学生が数多く在籍しています。また勉強が好きな学生は、本学の大学院健康・スポーツ科学研究科で学んでいます。あなたも興味があれば一緒に学びませんか?

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『一生を描ききる女性力を。』をVisionに掲げる日本最大の女子総合大学。2023年4月、新たに心理・社会福祉学部、社会情報学部、スポーツマネジメント学科(健康・スポーツ科学部)が誕生。2024年4月には、歴史文化学科(文学部)が誕生し、12学部20学科の女子総合大学に進化しました。文系、理系、スポーツ、芸術系まで多種多様な学びに加え、キャリアセンター・学校教育センターを中心に就職サポートも充実。自らの意志と行動力で可能性を拡げ、生涯を切り拓いていく女性を育成しています。