感じて、体で表して、形にする 子どもたちが「平和」を創る
広島で被爆した人々の思いをもとに
「平和」というと、とても抽象的な概念もしくは遠いところや大人の世界の話だと思うかもしれません。しかし、広島で被爆した人々は「小さい頃から平和が一番だということを教えてほしい」という強い思いを持っています。そのため広島県では、戦後より幼児期から平和の文化に触れる試みが行われてきました。幼児期から児童期への平和教育の研究では、被爆した人々への聞き取りなどを行い、子どもたち自身が平和をつくり出す主体として意識できるような教材の開発が行われています。
受け身ではない学びを生み出す
平和教育のための教材展開は、3つのステップになっています。まず幼児にも伝わりやすい大型紙芝居を使って、「広島の被爆樹木と人々」にまつわる実話を聞き、子どもたちはイメージを心に刻みます。それをもとに、次は「芽が出て、花が咲き、木になる」という、木になぞらえた平和の成長を身体各部を使いながら表現して、自分が平和の主体であることを全身で感じるのです。そして最後のステップでは、被爆された方々の願いなどを共有しながら、造形活動として鶴を折ります。5歳児になるとそれぞれが折った鶴を合わせて、地球やハートなど1つの造形物にする協同的な表現も見られます。
地域に根差した教材は世界でも応用可能
遊びや表現活動を大切にするフランスの幼児教育においても、自分の住む地域の森や海に住む生き物、伝説や伝統文化など地元の特色を子どもたちの学びに生かしています。地域に根差した教材は、子どもたちにとって身近であるがゆえに、関心を持ち主体的に知ろうという気持ちを引き出します。広島発の平和教育メソッドは、広島という地域性を持ちながらも、世界で平和の重要性が再認識されている現在、外国でも実践されて効果を上げています。フランスでは紙芝居の後、7歳の子どもが「大統領に『核のボタンを押しちゃダメ!』って手紙を書かなくちゃ」と言いました。保育・幼児教育は次の世代の心を育み、平和な社会づくりにつながると言えるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
福山市立大学 教育学部 児童教育学科 准教授 大庭 三枝 先生
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比較保育・幼児教育学、平和教育学先生が目指すSDGs
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