文化を創り出す百貨店から見える、マーケティングと消費文化
消費文化と百貨店
買い物に行くと、お店では洋服を着たマネキンを目にします。この「マネキンに服を着せて売る」という文化を創ったのは百貨店です。昭和初期まで、洋服は個別に仕立てて作るものでした。大量の既製品を作って多くの人に安く届けようと、マネキンを利用してファッションを提案するスタイルを考えたのです。
「贈答文化」としてのお中元・お歳暮を世間に広める一端を担ったのも百貨店と言われています。1950年代にはギフト商品として三種の神器といわれた洗濯機・冷蔵庫・テレビまで登場させていました。また、バブル期にはブランド品を贈ることが提案されました。こうして消費文化として根付いていったお中元・お歳暮は百貨店のマーケティング戦略によって大きな変化を遂げていました。
マーケティングと消費文化
もちろん、消費者に受け入れられなければ文化として根付きません。消費文化を見据えて考えられるものであり、またマーケティングによって消費文化が創られるのです。消費文化は固定化されたものではないため、消費者の根底にある「欲しい」を見極めることが大切です。
例えば、お中元を贈る人は減少傾向にありますが、コロナ禍を経て、人々はつながりや絆を求めて、贈り物に絆を育むコミュニケーションツールとしての役割が再認識されたようです。消費者には、「誰かとつながっていたい」「コミュニケーションを取りたい」といった普遍的な思いがあります。その思いとマッチしたときに、その消費行動が選択されるのです。
新しい文化創造へ
そして今、百貨店の新しい経営戦略が展開されつつあります。実店舗で商品を体験して、実際に買うのはウェブサイトという体験型スタイルの店舗が登場しています。
また、今は「推し活」や、地域活性化、SDGsなど、誰かを応援して社会に役立てるために消費する動きが活発になっています。その思いに対応すべく、地域を応援する物産展やイベントなども展開しています。百貨店は、新たな消費文化を創造する装置として挑戦し続けているのです。
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