「その人らしさ」を支えるしくみ

「その人らしさ」を支えるしくみ

成年後見制度とは

判断能力が低下した人を社会全体で支える仕組みが、「成年後見制度」です。例えば、認知症や知的障害、精神障害のある人は、不動産の売却や施設への入所手続きといった重要な判断を一人で行うことが難しい場合があります。そこで家庭裁判所が選任する「後見人」が、代理で契約を結んだり、本人に不利益な行為の取り消しができたりするのが成年後見制度です。2000年から施行され、支援を必要とする人は1千万人を超えると推計されますが、実際の制度利用は25万人ほどにとどまっています。

なぜ利用が進まないのか

制度の利用が思うように進まない理由の一つに、後見人の選任を裁判所に申し立てる際の費用や、利用者が後見人に支払う報酬の負担が挙げられます。一度後見制度が始まると、基本的には利用者本人が亡くなるまで支援が続く「終身型」であり、例えば不動産の売却といった、後見人を必要とする当初の目的を果たしたら終わり、という仕組みではないのです。また、後見人は弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職だけでなく、一般市民が選任されることもあります。しかし、特に関西では、「一般市民の後見人は無報酬で活動する」という不文律があり、一般市民の担い手不足につながっています。

社会化に向けた取り組み

そこで兵庫県明石市では、一般市民による後見人の活躍を支える仕組みが整えられました。利用者の負担を軽減しつつ、市民後見人にも適正な報酬が支払われるように、賛同者の寄付を元手とする基金が創設されたのです。さらに、専門家ほどの知識を持たない市民後見人の活動を支援するための、勉強会や養成講座といった取り組みも成果を上げています。また、制度を終身型でなく有期型にしたり、状況に応じて専門職から一般市民に後見人を交代できたりするような、国の法改正に向けた検討の動きも見られます。成年後見制度を、社会に開かれた持続可能な制度にするための試みが進んでいるのです。

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神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 社会リハビリテーション学科 講師 香山 芳範 先生

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メッセージ

自分の「強み」を見つめ直し、それを活かせる場がどこにあるのかを意識してみましょう。もちろん、好きなことや憧れていることを学びにつなげられるのは理想的です。しかし、憧れだけで進んでしまうと、思いがけない困難に直面することもあります。私自身、大学で福祉を学んだ後、憧れていた法律の分野に大学院で進学しましたが、数多くの試練を経験しました。自分では気づきにくい強みも、家族や友人など身近な人に尋ねてみると、新たなヒントが得られるかもしれません。進路は少しだけ慎重に、けれど前向きに選んでいきましょう。

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