ショッピングモールから考える規制緩和と地域経済
日米貿易摩擦とショッピングモール
ファストファッションのお店や家電量販店を中心に、さまざまな専門店が集まる大型ショッピングモールは、実は、日本とアメリカの間で交わされた「日米構造協議」の結果、造られるようになりました。日本には、「大規模小売店舗法」という法律によって、資金や土地があっても出店を制限される時代がありました。しかし、1980年代のアメリカとの貿易交渉の結果、この法律は改正(後に廃止)され、お店の大きさや立地などの条件が大幅に緩和されました。そのため、複合型の大型商業施設や、現在よく目にする郊外型の大型専門店「ショッピングモール」が全国に普及していったのです。
自由競争がもたらしたもの
「大規模小売店舗法」は、百貨店や、当時台頭してきた総合スーパーマーケットの出店を細かく規制し、地域経済の中心であった商店街を保護してきました。しかし、規制緩和の結果、自由な商業活動と競争が促進されるようになり、商店街は衰退していきました。地域の生活者にとってはメリットが増した半面、失ったものも多いといえます。例えば、商店街が管理していた駅前のアーケードが維持できなくなり、地元のお祭りのために資金や人を集めるといった機能も失われるなど、規制緩和は、地域の活気を失わせる要因にもなりました。
地域社会への参加が経済を盛り上げる
苦境に立たされた商店街ですが、近年、若い世代を中心に新たな取り組みを始めています。地元出身の漫画家の作品や、地元にゆかりのあるキャラクターを生かした観光商店街、高齢者や赤ちゃん連れの家族に優しいサービスなど、従来の小売店の集積から形を変えながら、生き残りの道を模索しています。
経済学や社会学では「ソーシャル・キャピタル」という概念が重視されています。社会の信頼関係や規範、ネットワークづくりこそが社会の効率性を高め、地域経済も活性化させる、という考え方です。今後、商店街を中心とした地域社会のあり方は、一層、重要性を増していくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
桃山学院大学 経済学部 経済学科 教授 角谷 嘉則 先生
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