くだけた会話を分析してわかる、自然な外国語とは
英語話者にとって自然な会話って?
カフェなどで友人同士がするくだけた会話を分析すると、各言語にとっての自然な表現方法がわかります。例えば英語の母語話者は体験談を語った場合、「だからこうするべきなのだ」などと自分の意見を伝える人が多いです。一方日本語話者は「うれしかった」「腹が立った」などの感情を共有する傾向にあります。そのため、日本語の母語話者が英語で同じように日常会話をしていると「つまり何が言いたかったのか」と結論や意見を求められるのです。会話のように複数の文章で成り立つものを言語学では「談話」と呼んでおり、各言語の特徴や話の進め方などの研究に談話を役立てています。
定型表現だけがすべてではない
談話分析の結果は外国語教育に生かすことも可能です。例えば日本の英語授業では、意見を主張するための表現として「in my opinion(私の意見としては)」などフォーマルな定型表現を教えています。しかし英語話者のくだけた会話では、意見を述べるための特別な定型表現はあまり聞かれません。例えば「あの場所は危ない」と伝えたいとき、くだけた会話の中では「あの場所に行ったとき、後ろから変な人につけられたから危ないと思う」など、体験談をもとに説得力のある意見を述べる人が多いのです。そのため英語教育でも定型文だけではなく体験談によって反論したり意見を述べたりする練習などを取り入れれば、自然な会話に一歩近づくと考えられます。
自然な会話の重要性
そもそもなぜ自然な会話の習得が重要なのでしょうか。実は外国語で文法や単語を間違えた場合でも、話し手に対する人間的な評価にはそれほど影響しないことが研究でわかっています。しかし話の進め方がその言語で自然ではない場合、「あの人は強引な人だ」とか「何を考えているのかわからない」などと話し手への評価が下がってしまう場合があるのです。だからこそ談話分析によって、各言語における自然な話の傾向をつかむことが、スムーズなコミュニケーションの習得に役立つと考えられます。
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清泉女子大学 総合文化学部 ※2025年4月開設 総合文化学科(国際文化領域) 教授 鈴木 卓 先生
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