経営学に歴史あり! 未来につながる過去をみる
大学で何を教えるか
日本の経営学の理論的土台となったドイツの経営学は、19世紀後半に誕生しました。1871年に建国されたドイツ帝国では、イギリスやフランスといった強国に追いつくために、「経済を国の強みに育てる」という国家的命題がありました。そのための人材の養成所として、商業に関わるドイツ初の高等教育機関となるライプツィヒ商科大学が1898年に設立されましたが、問題は「大学で何を教えるか」でした。
ドイツ発の経営学
「経済」は、資源をいかに効率的に不公平感なく社会に分配するかを追求します。一方、経済を支える「企業」は、同じ資源の有効活用でも、いかに「利益を得るか」という商売思考を持ちます。そのため当時の経済学者から、真理を探究する場の大学で「金もうけのための学問を教えるのか」という批判を受けて、大論争が起きたのです。学問の名称も「私経済学」や「個別経済学」などが議論されて、最終的には「経営経済学」に落ち着きました。こうしてドイツから発せられる経営学研究が本格的に始まることになります。
第二次世界大戦前のドイツでは、「規範論学派」が一大勢力となりました。企業の姿を客観的に記述する「理論学派」や、会計など経営の実践に役立つ「技術論学派」に対して、規範論学派は「良心を持つ人間からなる企業経営は、一人ひとりの人間主体を尊重し、社会全体も豊かにする」という共同体思想とも言えるものでした。ただ、この思想と親和性が高かったのがナチスです。その反省もあり、戦後のドイツでは規範論学派は失墜して、理論学派が優勢となりました。
経営学の歴史から未来を考える
上記はドイツの経営学の歴史ですが、現代の経営学はグローバル化や技術発展などにより、多様化と細分化が進んでいます。経営学の歴史を類型的に整理して示す「経営学史」は、学問としての経営学の立ち位置を確認するとともに、現代の経営課題にどう対応するかという、未来に向けた思索や議論につながる研究でもあるのです。
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