講義No.14269 経営学・商学

経営学に歴史あり! 未来につながる過去をみる

経営学に歴史あり! 未来につながる過去をみる

大学で何を教えるか

日本の経営学の理論的土台となったドイツの経営学は、19世紀後半に誕生しました。1871年に建国されたドイツ帝国では、イギリスやフランスといった強国に追いつくために、「経済を国の強みに育てる」という国家的命題がありました。そのための人材の養成所として、商業に関わるドイツ初の高等教育機関となるライプツィヒ商科大学が1898年に設立されましたが、問題は「大学で何を教えるか」でした。

ドイツ発の経営学

「経済」は、資源をいかに効率的に不公平感なく社会に分配するかを追求します。一方、経済を支える「企業」は、同じ資源の有効活用でも、いかに「利益を得るか」という商売思考を持ちます。そのため当時の経済学者から、真理を探究する場の大学で「金もうけのための学問を教えるのか」という批判を受けて、大論争が起きたのです。学問の名称も「私経済学」や「個別経済学」などが議論されて、最終的には「経営経済学」に落ち着きました。こうしてドイツから発せられる経営学研究が本格的に始まることになります。
第二次世界大戦前のドイツでは、「規範論学派」が一大勢力となりました。企業の姿を客観的に記述する「理論学派」や、会計など経営の実践に役立つ「技術論学派」に対して、規範論学派は「良心を持つ人間からなる企業経営は、一人ひとりの人間主体を尊重し、社会全体も豊かにする」という共同体思想とも言えるものでした。ただ、この思想と親和性が高かったのがナチスです。その反省もあり、戦後のドイツでは規範論学派は失墜して、理論学派が優勢となりました。

経営学の歴史から未来を考える

上記はドイツの経営学の歴史ですが、現代の経営学はグローバル化や技術発展などにより、多様化と細分化が進んでいます。経営学の歴史を類型的に整理して示す「経営学史」は、学問としての経営学の立ち位置を確認するとともに、現代の経営課題にどう対応するかという、未来に向けた思索や議論につながる研究でもあるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

龍谷大学 経営学部 経営学科 教授 梶脇 裕二 先生

龍谷大学 経営学部 経営学科 教授 梶脇 裕二 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

経営学史

先生が目指すSDGs

メッセージ

ものごとの「歴史」に関心を持ってほしいです。世の中が目まぐるしく動くなかで、数十年後の世界がどうなっているかは誰にもわかりません。不確実性が高い世界を生きるうえで、過去の歴史から、現代の課題解決のカギや、未来に向けた備えのヒントが得られるかもしれません。学びにおいても同じです。経営学だけでなく、法学でも工学でも医学でも、人間の営みが整理された歴史を理解することで、どの分野でも学びが確実に深まり、多面的に理解できるようになるでしょう。

龍谷大学に関心を持ったあなたは

Less Me More We
あなただけの世界から、私たちを想う世界へ

あらゆる「壁」や「違い」を乗り越えるために、「まごころ」を持ち、「人間・社会・自然」について深く考える人を育む。それが、龍谷大学の教育のあり方です。自分自身を省み、人の痛みに感応して、他者を受け容れ理解する力を持つ。人類が直面するリアルな課題と真摯に向き合う。そして様々な学びを通じて本質を見極める目を養い、自らの可能性を広げていきます。