これからの魅力的な観光づくりに理工学のアプローチで取り組む
観光における交通の重要性
せっかくの旅行なのにアクセスが不便だったり、渋滞で不快な思いをしたりした経験はありませんか。交通は旅行全体の満足度を左右する大きな要素で、いい観光地づくりには交通サービスの質向上が欠かせません。ポイントは、利用者を時空間で分散する仕掛けを導入し、混雑緩和につなげることです。例えば高速道路の渋滞解消なら、道路の新設や拡幅を図ることも重要ですが、車が集中しないよう旅行者の出発時間を分散させる「交通需要管理」の取り組みを組み合わせた方がメリットが大きくなります。
観光の未来を担う「MaaS」
交通分野でのICT(情報通信技術)活用の一つとして注目されているのが「MaaS(マース:Mobility as a Service)」です。これは電車やバス、タクシー、ライドシェアなど交通サービスの検索から予約・決済までをスマートフォンアプリから一括して行えるようにするものです。観光地では車を使わない人や訪日外国人が移動に困るケースが多く、Maasの活用で交通サービスと移動先でのアクティビティの予約・決済がセットになれば利便性や満足度が高まります。またそのセットを工夫して旅行者の流れを変えれば、密の解消につながり、観光交通に大きなイノベーションをもたらす可能性があります。
理工学のアプローチで観光を研究
観光客の行動分析に、スマートフォンから得られる位置情報を活用できるようになりました。一方で、そのような情報から今後の行動予測を行うときには、なぜその時間、その場所にいたのかの背景や理由を探る必要があり、従来のアンケート調査などからニーズを解き明かしていくことの重要性に変わりはありません。
社会情勢や価値観の変化により、観光のあり方やニーズも刻々と変化しています。多様で大量のデータやアンケート結果を解析し、理工学のアプローチで科学的に観光政策や施策の立案に取り組む研究は、政府・自治体や交通・観光事業者から今後ますます必要とされていくでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 観光科学科 教授 清水 哲夫 先生
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先生への質問
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