廃棄材料の有効活用で建築はもっと優しくなれる?

廃棄材料の有効活用で建築はもっと優しくなれる?

工学は生活に身近な学問

工学は、高校で学ぶ数学や物理の知識を使って私たちの暮らしを支える技術を創り出し、基礎学問を活用して、生活をより良くする技術を開発する分野です。建築工学では、地震に強い建物を作るために柱の太さを数式で計算したり、夏は涼しく冬は暖かい効率的な空調システムを設計したりします。あなたが今いる教室や家も、すべて工学の知識によって安全で快適に設計されているのです。

建設現場で捨てられるモルタル

実は建設現場では、意外な無駄が発生しています。鉄筋コンクリートの建物を作るとき、コンクリートを運んできたミキサー車からポンプ車を経由して管で型枠にコンクリートを流し込みます。この際、まず管に水を流し、次にモルタル(砂利の入っていないコンクリート)を流してから、本来のコンクリートを流すルールがあります。これは管の内壁がコンクリートの水分を吸収してコンクリートの性能に影響を与えないようにするためですが、このときのモルタルは現状、型枠には流し込まずに毎回廃棄することとされています。

SDGsにつながる研究

現在の建設業界では「つくる責任・つかう責任」が重要視されています。昭和・平成時代は、いわば環境を守る責任でしたが、現在は積極的に環境改善に貢献する攻めの側面も有するようになりました。これが背景となり、廃棄されるモルタルを有効活用する研究が注目され始めました。もし最初に流すモルタルをコンクリートと混ぜて使えるなら、材料の無駄をなくして、廃棄物を大幅に削減できるからです。しかし、建物の強度・安全性に影響がないか確認する必要があります。現在の研究では、モルタルとコンクリートを混ぜても建物の強度に問題がないことが実験で証明されつつあります。
この技術が実用化されれば、建設現場での廃棄物を大幅に削減できます。実験とコンピュータシミュレーションの両方を使って、より安全で環境に優しい建設技術の開発が進められています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

前橋工科大学 工学部 建築・都市・環境工学群 准教授 佐藤 良介 先生

前橋工科大学工学部 建築・都市・環境工学群 准教授佐藤 良介 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

建築構造学、材料工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

建築を志す高校生の多くは、最初はデザインに関心を持ちます。しかし、建築学は実際には、構造、材料、設備、環境など、多岐にわたる分野の集合体です。高校で学ぶ数学・物理は、建物の安全性や快適性の問題解決の基礎となります。受験勉強で培った知識は、進路選択において大きな資産になるでしょう。当初の志望と異なる専門に進んだとしても、それまでの学習経験が思わぬところで生かされることがあります。多様な学問領域に興味を持ち、可能性を広げてみてください。あなたの努力は必ず実を結びます。

前橋工科大学に関心を持ったあなたは

前橋工科大学は、全国的にも数少ない公立の工科系大学で、先進的で個性が光る幅広い学科が特徴です。小規模な大学ですが、少人数教育によるきめ細やかな指導や、演習・実習・実験などの体験的な授業が自慢です。暮らしやすい前橋市で、地域社会の発展と福祉の向上に貢献する技術者を一緒にめざしませんか。