講義No.07373 医学 薬学

薬がよく効くようにするための「薬剤学」とは

薬がよく効くようにするための「薬剤学」とは

薬の効果を引き出すために必要なこと

薬の効果を最大限に引き出すには、薬の動きをコントロールすることが大切です。このような学問を「薬剤学」と呼んでいます。せっかく薬を飲んでも、消化管を移動して腸で吸収され血液を介して全身に移行する過程で、解毒され薬剤成分の多くが失われるのでは、効果は望めません。もちろん、そういったことがないようにあらかじめ設計加工されていますが、実際に服用してみると想定された薬効が出ない場合があります。

薬を飲むのではなく、肺から吸引する

想定された薬効が出ない場合は、薬を腸からではなく、肺から吸収させるのも一案です。肺の奥にある肺胞はガス交換を行う臓器です。肺胞は、表面積が広く、解毒作用もあまり働かないうえに、血管にも密接しているため、薬剤をそのまま血管に移動させることができます。ただし、薬効を高めるには、口から肺に吸引された薬剤は、できるだけ肺の奥の肺胞まで飛んでいく必要があります。そこで、薬剤の粒子を軽くしたり、表面を凹凸にして浮力を受けやすくしたりして、形状を加工します。薬剤の物理現象に注目して、薬の吸収を改善しようというわけです。

未検証の飲み合わせへの対応も

また、飲み合わせも薬効を変えてしまうことがある問題のひとつです。ある種の降圧剤を、グレープフルーツジュースと一緒に飲むと、降圧剤の吸収がよくなりすぎて、血圧が余計に下がってしまうというのはよく知られています。ところが、医療現場では、ほかの果物あるいはジュースはどうなのかという疑問が出る場合があります。ものによっては検証されていないものもあります。そこで未検証のものについては、問題があるかどうかはもちろん、場合によっては、なぜ問題が起きるのかを解明する必要があります。
薬は理想的な条件がそろわないと、高い薬効を得ることはできません。開発段階だけでなく、医療現場で初めてわかる問題もたくさんあります。それを、薬剤学やほかの学問分野の知見も生かしながら一つひとつ解決しているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

崇城大学 薬学部 薬学科 教授 山﨑 啓之 先生

崇城大学 薬学部 薬学科 教授 山﨑 啓之 先生

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薬学

先生が目指すSDGs

メッセージ

高校時代、どの学部に行くか悩んでいたときに、薬剤師である祖父に薬剤師について尋ねたところ、「患者さんのために自分の技術、知識を生かせるやりがいのある仕事である」と教えてもらいました。
物理、化学、生物など理系科目が好きで、医学についても広く学べるということもあり、薬学部に進学しました。入ってみると、薬剤師や製薬会社だけでなく、行政など広い活躍の場があることを知りました。あなたも薬学部の魅力を調べて、薬学を志してもらえたらと思います。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

崇城大学に関心を持ったあなたは

崇城(そうじょう)大学は薬学、生物生命、工学、情報、芸術の5学部からなる総合大学です。“世界で活躍できるプロフェッショナルの育成”を目指し、最先端の施設・設備・研究を備え、学生一人ひとりを厳しく育てる実践的な教育プログラムにより、高い就職率や国家資格合格率を維持しています。理系私立大学では全国初の英語を公用語とする学習施設「SILC(シルク)」があり、英語ネイティブ講師による英語教育が成果を上げています。本学の地である熊本から産業界の未来を切り拓く若者を輩出する学舎でありたいと決意しています。