ヨーロッパ系移民から考える、日本社会のステレオタイプ

ヨーロッパ系移民から考える、日本社会のステレオタイプ

日本で増えているヨーロッパ系移民

昨今、日本で暮らす欧州諸国の出身者が増えています。その数は1990年代から少しずつ増加して、日本に中長期的に滞在できる在留資格を持つヨーロッパ系の人々は、全国に8万人ほどいます。日本に定住する海外出身者のことを、日本では定住者、移住者、在留外国人などさまざまな名前で呼んでいますが、ここでは「定住国を変更した人々」という国連の定義に従い、「移民」とします。

なぜ日本にやってくるのか?

欧州出身の移民が日本で暮らす理由はさまざまです。日本人との結婚をきっかけに移住した人もいれば、ワーキングホリデーや留学で来日する人もいて、その中で日本が気に入って暮らし続けている人もいます。ただ、全体的な傾向としては、キャリアアップを志向して来日する人もいますが、文化への憧れなども含めた「日本で住んでみたい」ということを理由に、日本に在留する人も多いようです。

帰国理由から見える、日本の社会通念

しかし、そのように前向きな理由で日本に移住したとしても、しばらくするとヨーロッパに帰ってしまう移民も一定数存在しています。彼らの帰国理由を調べてみると、ライフステージの変化など個人的な理由だけでなく、日本の社会通念が影響を及ぼしているケースも多いのです。例えば、欧州系移民は、長く日本で暮らしていても、見た目から「よそ者扱い」をされることが少なくありません。日本語を滑らかに話すと「日本語が上手ですね」と言われたり、母国は英語圏でないにもかかわらず、英語力を期待されて活躍の場が制限されてしまったりすることがよくあります。あるいは、「欧米人は自己主張が強いため社風に合わない」と採用が見送りになることもあります。こうした欧州系移民の経験から見えてくるのは、日本に存在する「白人は英語を話し、日本の空気を読む文化にはなじまない異邦人」というステレオタイプです。移民という国を超えた人々の移動に焦点を当てることで、社会の背後にある考え方が浮かび上がってくるのです。

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龍谷大学 国際学部 国際文化学科 准教授 デブナール ミロシュ 先生

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社会学は、「当たり前」を疑い、検証していくことで、社会の仕組みや人間同士の関係のあり方を探る学問です。少しでも社会学に興味を持ったら、日常生活で使う言葉への感覚をぜひ大事にしてください。言葉への違和感を突き詰めて、その正体を探ろうとすることから研究は始まります。そして、大学では自分が見たことを自分なりに解釈して、思考をまとめて論じる力を伸ばすことも意識してください。こうした力は社会学を学ぶ上で役立つだけでなく、AI時代を生き抜く鍵にもなるはずです。

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