小笠原諸島から見る文化人類学
「東洋のガラパゴス」小笠原諸島
東京都心から1,000kmほど離れた小笠原諸島(東京都小笠原村)は、人口2,000人ほどの父島と、400人ほどの母島を中心としています。戦後にアメリカの統治下となり、1968年に日本に返還されました。小笠原諸島には空港がないため、島へ行く交通手段は都心から出る週1便のフェリーしかなく、片道24時間かかります。自然や生物が独自の進化を遂げた小笠原諸島は「東洋のガラパゴス」と称されており、2011年に世界自然遺産に登録されました。
住民の8割が移住者
その小笠原諸島を対象とした文化人類学の研究が進んでいます。研究は主に、住民の生活現場へ行き、一緒に行動したり話したりしながら島民のリアルさに近づいていく「参与観察」の手法が取られます。
住民は約8割を移住者が占めており、入れ替わりも活発です。移住者は、かつては世界中をめぐった旅人が島にたどり着いてそのまま住み着くこともありました。その一方、エコツーリズムの推進や世界自然遺産の登録を機に変容がみられます。自然を観光資源とした「エコツーリズム」などの観光業が島の産業として成長し、観光業や自然保護活動のための公共事業に従事する人たちの移住が増えたのです。また「島暮らし」というと、濃密な人間関係がイメージされますが、小笠原諸島では大都市郊外のニュータウンのようなさほど濃密ではない人間関係の一面も見受けられます。
ゲストがエコツーリズムの担い手に
研究では、エコツーリズムに訪れる観光客(ゲスト)と、住民(ホスト)との関係性を分析する試みも続いています。かつてのゲストであったホストが観光客を迎え入れることや新たに生じる移住者を迎え入れる現象が垣間見ることができます。現地調査を通じて、小笠原諸島の流動性を浮かび上がらせることが期待されます。
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先生情報 / 大学情報
和洋女子大学 国際学部 国際学科 助教 山崎 真之 先生
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