「人にやさしい住まい」はどうつくる? 住居学で考える

「人にやさしい住まい」はどうつくる? 住居学で考える

暮らす人を主役にする「住居学」

住まいは、単なる建物ではなく、「人が安心して暮らす場所」であるべきです。住居学はこの考え方に立ち、暮らす人を中心に住まいを見つめる学問です。生活者の視点から住まいをとらえることに重きを置いています。最近では、高齢者や障がいがある人、外国人、ひとり親家庭など、住まいを借りにくい人が増えてきました。こうした人々は「住宅確保要配慮者」と呼ばれ、特に一人暮らしの高齢者は、孤独死のリスクなどの懸念から家主に敬遠されることもあります。住まいはわたしたちの生活の基盤であり、「人にやさしい住まい」を社会全体で支える必要があります。居住の安定、つまり誰もが安心して暮らせる住まいをどう守るかは、今後の社会が解決すべき大きな課題です。

「居住支援」という考え方

住宅確保要配慮者を支える仕組みとして「居住支援」があります。住まいの提供にとどまらず、生活全体のサポートも含む取り組みです。例えば、災害で家を失った人にとって、住まいの確保は生活再建の第一歩です。居住支援では住居の確保だけではなく、暮らしの悩みや金銭面を含めた幅広いサポートが行われています。住まい探しやその手続きの支援、日常生活の見守りや相談など、住まいの確保からその後の暮らしまで、支援のかたちは一人一人に合わせて考えられています。

地域で広がる「人中心の住まいづくり」

「人中心の住まいづくり」は、誰もが安心して暮らせる社会の土台です。近年は、地域レベルでも広がりを見せています。福祉機関などによる見守り、家賃補助、住まいに困る人と空き家のマッチングなど、地域特性に応じてさまざまな居住支援の仕組みが整えられつつあります。
「住まい」はわたしたちの生活に不可欠です。いま住まいを確保できている人も、突然住まいが無くなってしまうことや、誰かに支援してほしいといった事情が生じるかもしれません。「誰もが安心して暮らせる住まいとは?」と改めて考えてみると、新たな気づきがあるはずです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

和洋女子大学 家政学部 家政福祉学科 助教 金指 有里佳 先生

和洋女子大学家政学部 家政福祉学科 助教金指 有里佳 先生

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住居学

メッセージ

大学進学や就職をきっかけに一人暮らしを始める人も多いでしょう。「住まい」に関連して、部屋の使いやすさや動線、街のバリアフリーなど、暮らしやすさを左右する課題は身近にあります。住居学は「暮らす人」を中心に、住まいや社会のあり方を考える学問です。建築や福祉、デザインなど多様な分野と関わりながら学べるのも魅力です。もし少しでも関心を持ったら、その気持ちを大切にしてみてください。新しい視点や、自分らしい未来へのヒントが見えてくるかもしれません。

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明治30(1897)年の創設以来、社会で自立できる女性を育成し続けてきた和洋女子大学。現在、4学部9学科(【人文学部】日本文学文化学科/心理学科/こども発達学科【国際学部】英語コミュニケーション学科/国際学科【家政学部】服飾造形学科/健康栄養学科/家政福祉学科【看護学部】看護学科)を有し、一人ひとりの総合力を高める多彩な学びを豊かな教養教育と実践的な専門教育で提供しています。さらに、AIを活用したデータサイエンスの学びも強化。今後も社会の様々な課題を解決し、社会貢献できる人材を育成していきます。