文化人類学の視点で「月経」を考えてみる
違いの先にある共通課題を浮かび上がらせる
文化人類学では主に他国の文化を調査してきましたが、それは、違いを知ることだけが目的ではありません。むしろ、他国の事例が鏡のような役割となり、当たり前過ぎて気づかなかった日本の実態が客観的に相対化されて見えてくることにこそ、学問上の面白さがあります。様々な国の事例から得た知見を共有することで、日本も含むSDGsの課題解決にもつながっていきます。
月経の対処を他国と比較すると
具体的なテーマとして、「月経」を取りあげてみましょう。例えば、月経を理由に女児が学校へ行けなくなることは、SDGs課題としても注目されています。日本では、経済的な事情で生理ナプキンが買えない「生理の貧困」が社会問題となりました。では、インドネシアではどのような事情があるでしょうか。月経の経血が不浄なものというイスラームの考え方などがあり、使用した生理ナプキンをそのまま捨てず、洗って捨てる対処が広く行われています。そのため、洗い場などの環境が整備されていないと外出先で捨てられず、ビニール袋に入れて持ち帰るか長時間交換しないなど、不衛生になってしまいます。この調査では、月経の課題の一つに、生理ナプキンを「廃棄」する困難があることが浮き彫りになりました。
日本の社会は月経をどう見ている?
日本の場合も、やはり経済的な事情以外にも課題があります。生理ナプキンのコマーシャルでは、月経がない感覚でいられる商品特性がPRされ、意識しなくてよいのがすばらしいとされています。しかし、月経の重さは人によってそれぞれ違い、女性同士で話してみてもその違いに驚くほどです。重い人は学校や職場でのQOLが大きく低下しますが、軽い人には日常の延長です。また、日本では生理ナプキンを買ったり持ち歩くことが「恥ずかしい」という観念も根強くあります。
月経と対処の事例を文化人類学的に調査分析すると、国や地域での考え方、実践、制約、可能性などを文化の観点から理解し、改善するための提案ができるのです。
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日本福祉大学 国際学部 国際学科 教授 小國 和子 先生
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