「ゴミのゴミ」が作物の救世主に!
有機農業で多様な作物の病気が出現
有機農業とは、化学的な農薬や肥料を使わずに作物を育てることをいいます。農薬を使わずに作物を栽培すると、これまで知られていなかったさまざまな作物の病気が現れる可能性があります。その病気の種類や、農薬の代わりに病気を抑制する有機的な物質について、研究が行われています。
メタン発酵消化液が病気を抑制
これまで知られていなかった作物の病気の研究については、作物上に形成された病徴や菌体からDNAを抽出して解析し、病原体の種類を明らかにしていきます。また農薬の代わりに作物の病気を抑制する有機物質の研究では「メタン発酵消化液」が作られています。
メタン発酵消化液とは、作物の「残(ざん)さ」を動物のフンと混ぜて酸素のない嫌気状態にし、中の微生物の発酵によってメタンガスを発生させた後に残ったものです。つまり、いわば「ゴミのゴミ」がメタン発酵消化液となるのです。メタン発酵消化液には作物に重要なリンや窒素、カリウムなどが入っているのに加えて、作物の病気に対する抑制効果があることがわかりました。それはメタン発酵消化液内に存在する微生物の働きであることも分かっており、その微生物たちを取り出して育ててやることで、どの微生物がどんな抗生物質を作っているのかも明らかになりつつあります。現在は、メタン発酵消化液をどのくらいの量やタイミングで作物に与えたらよいか、実用に向けての実験が行われています。
将来的に増えると予測される有機農業に貢献
現在、日本で行われている有機農業は国の作付面積の約0.6%ほどですが、国の施策である「みどりの食料システム戦略」によって、2050年には全畑作面積の25%を有機農業にする目標が掲げられています。化学的な農薬や肥料を使わずに健康的な作物を作る有機農業は、人にはもちろん環境にも貢献するものです。メタン発酵消化液以外にも有機物質はあり、これらを複合的に使うことで、さらに有機農業における作物の病気の抑制効果が広がることが期待されます。
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