映画の架空の大型ロボットを実用化するには?

映画の架空の大型ロボットを実用化するには?

現実になりつつあるパワーローダー

1986年のSF映画『エイリアン2』では、物語のクライマックスで、主人公が「パワーローダー」という大型ロボットに乗り込み、強大なエイリアンと対決します。両手両足で操作するスーツ型の架空の大型ロボットは、油圧シリンダで動作するワイルドな作業機械として描かれていますが、いまだ実用化も実現もされていませんでした。しかし、このパワーローダーは今、実験室では現実のものとなりつつあります。

センサなしで油圧駆動系を制御する

多くの人がイメージするロボットでは、多くのセンサが実装され、それらから得られる情報をコンピュータで計算し、電動モータを制御して関節駆動する仕組みになっています。この仕組みは、既知の軽量物を器用に操る小型ロボットには適しています。ところが、火災や原発事故現場、地雷原、農場において(設計図の無い)未知の重量物を確実に操る大型ロボットに適用した途端、センサは壊れ、電動モータはパワー不足という問題に直面します。
問題の解決には、センサを極力減らして油圧シリンダで動作させる必要がありますが、油圧シリンダは流体を間に挟むことになるため、電動モータの理論では緻密な制御が難しく、実際、『エイリアン2』『マトリックス レボリューションズ』などの大型ロボットも画餅でした。
しかし近年、新しい力学に関する数学の研究として、人工物を1つの数式で書き表す手法が発見されました。その理論をさらに発展させていくことで、センサを介さない油圧シリンダの緻密な制御が可能になったのです。

将来のロボットはみな油圧駆動系に?

油圧シリンダで動作するロボットを実用化するには、安全性を確保・保証する解析という課題がまだ残されています。しかし将来的には、現在のロボットの多くが油圧駆動系に置換されても全く不思議ではありません。工場の床・壁に固定されたロボットよりも、移動するロボットほど可能性は高いのです。私たちがパワーローダーに乗り込んで操縦できる日は間もなく来るでしょう。

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信州大学 工学部 機械システム工学科 教授 酒井 悟 先生

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機械システム工学

メッセージ

常に誰かのまねをするのではなく、結果的に他の人からまねをされる人をめざしてください。はじめのうちは、優れた人のまねをすることも大事かもしれません。しかし、例えば大学に入学して研究テーマを選んだり提案したりする場面では、自分はこれに本気で打ち込みたいんだと思えることは何かと考え、それを見つけ出してください。そうして自分なりに見つけ出した目標・問題に地道に取り組んでいれば、いつか、他の人から必要とされる替えの効かない(人工知能にも置換されない存在)として社会に貢献できるのではないかと思います。

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