見えない光で見えないモノをみる! 近赤外線の測定技術
目に見えないけれど身近な光
「近赤外線」という人間の目には見えない光のことを知っていますか? 近赤外線は可視光線の赤色よりほんの少し波長が長い光です。最大の特徴は、私たちの身の周りにある有機物が近赤外線をあまり吸収しないということです。すなわち近赤外線は、さまざまな物を通り抜ける性質を持っているため、物を破壊することなく成分などを調べられるのです。
そんな近赤外線は、私たちの身近なところで利用されています。例えばミカンやリンゴなど、果物の糖度を測るときには近赤外線が使われています。
初めは役に立たない光だった!?
近赤外線が発見されたのは1800年のことです。しかし1960年ごろまでは、近赤外線は役に立たないと考えられていました。その通説を覆し、いろいろな物の状態を壊さないで調べることができるスグレモノだと証明したのが、アメリカの農業技術者だったカール・ノリスです。当時、アイゼンハワー大統領の命を受けて、小麦粉の品質を損なわず、中に含まれているタンパク質量を測る方法が研究されていました。それを模索するうちに、「近赤外分光法」という近赤外線を使った解析方法を見つけたのです。物に近赤外線を当て、近赤外線が通り抜けた度合いを調べることによって、成分などの状態を推定することができます。
なぜ役立つかは謎のまま
近年、近赤外線による測定技術は、農業分野だけにとどまらず、医療分野や環境保全にも利用され、応用の範囲がどんどん広がっています。ところが不思議なことに、近赤外線を使うとなぜ物質の状態をうまく測ることができるのか、その細かな理屈はまだよくわかっておらず、解明が待たれています。
また、より便利な装置の開発も望まれています。ハンディタイプの装置が登場していますが、1台80万円~100万円くらいと、まだまだ高価です。気軽に購入できるような値段の小型で扱いやすい装置が実用化されれば、近赤外線の測定技術はさらに身近なものになるでしょう。
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