ソフトウェア開発を容易にする、半導体チップの回路の部品化

ソフトウェア開発を容易にする、半導体チップの回路の部品化

低電力で高速処理を実現するために

ロボットは、カメラで入力した画像から今の状況を判断し、それに応じて手を動かします。その間、ソフトウェアで記述された手順をマイクロプロセッサが順番に実行して動作を実現するのです。画像処理やAIの手順は大量であり、リアルタイムで動作させるためには、マイクロプロセッサの動作周波数を高くし、処理を速くする必要があります。ここで電力をたくさん使ってしまう問題が生じます。そこで、デジタル回路をたくさん用意して処理を並列に実行する半導体チップが開発されています。並行に処理するため、低周波数でよく、低電力で済みます。

自由度は高いがハードルも高い

並列処理が可能な半導体チップの一つが、FPGA(Field-Programmable Gate Array)です。FPGAは、「AND/OR/NOT」ができる論理ゲートやメモリで構成され、その配線をつなぎ変えることで、自由に論理回路を書き換えられます。実際にシステムを作るには、FPGAの基本機能をどう組み合わせてどの順番で実行するかをソフトウェアで記述する必要があります。ここで問題となるのが、ソフトウェアを制作するためにハードウェアの詳細な仕様を把握しなければならず、開発に時間がかかることです。

メッセージ一つで動作を制御

そこで、FPGAの回路を部品化(コンポーネント化)して、抽象度の高いメッセージでハードウェアを操作できるようにする研究が進められています。例えば、「ロボットの何番の関節の角度をX°にする」ためのプログラムを書く場合、「FPGAの何番地にこの数字を書くと何が起こる」を把握して、多段階に組み合わせたプログラムを書く必要があります。開発に非常に時間がかかるのですが、回路のコンポーネント化によって、「ロボットの何番の関節の角度をX°にする」というメッセージを送るだけで済みます。この研究成果は、3次元積層半導体チップの設計をはじめ、幅広い応用が期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

熊本大学 工学部 半導体デバイス工学課程 准教授 大川 猛 先生

熊本大学 工学部 半導体デバイス工学課程 准教授 大川 猛 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

半導体工学、ロボット工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

進路を選ぶのは、将来の方向性を決める大事な決断ですから、いろいろな人と話してください。そのとき、同年代だけではなく、少し年上の大人の話も聞きましょう。「こういうことが好き」と話してみたら、「それは、ここで学べるよ」と教えてくれるかもしれません。また、今の学校の勉強が苦手という理由で、大学で学ぶことを諦めないでください。数学があまり得意ではないから理系は向いていないといった判断もしなくて大丈夫です。興味のあることを一生懸命にやっていれば、道は開けるものです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

熊本大学に関心を持ったあなたは

熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。