「自然の中で体験活動すること」の教育的効果を明らかに

アウトドアでの体験活動の教育的効果
現在、登山やクライミング、キャンプなどのアウトドア活動が趣味やレクリエーションとして人気となっています。これまでの調査で、野外活動は、特に子どもや若い人への教育効果が見込めるとされています。例えば、登山では普段の生活環境とは異なり、時には厳しい一面を見せる自然の中を歩き、自分たちで食事を作り、テントで寝泊まりする経験や、目標を達成するためにほかのメンバーと協力する経験によって、人間的成長が見込まれています。野外教育学という学問分野では、心理学などの知見を取り入れながら、野外における活動の教育的効果を客観的に明らかにするための研究を行っています。
心の変化を客観的にとらえる
研究の一環として、人の手がほとんど入っていない雄大な大雪山国立公園にて、4日間に渡る縦走登山の実施があります。登山前後で同じ項目による調査、効果測定を行い、その結果を心理学的な知見をもとにまとめます。教育効果の例として、参加者は自身が目標達成に必要な力をもっていると認識する「自己効力感」が高まる、自然を大切にする気持ちが強くなる、集団生活を通してリーダーシップやコミュニケーション能力が身につく、さらにはメンタルヘルスにおいても良い効果が生まれます。
現代社会と野外教育
野外教育の中でも、登山やクライミング、カヌーなどの冒険的な活動を教材とする教育は冒険教育と呼ばれ、その原点は、イギリスのアウトワード・バウンドという船員トレーニング学校とされています。同校は、第二次大戦時にドイツ軍の攻撃を受けた船員に過酷な状況でも諦めないトレーニングを始めました。戦後は社会に出る前の若者たちに、困難を乗り越える経験を通じて自己成長を促す教育を行っています。
現代の日本は、欲しいモノも情報も苦労無しにすぐに手にはいる便利な時代です。しかしその反面、自分で調べ、想像し、行動する機会を私たちから奪いつつあることも事実です。こうした時代・環境だからこそ、野外教育にかかる期待は大きいのです。
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先生情報 / 大学情報

北海道教育大学教育学部 芸術・スポーツ文化学科(岩見沢校) 教授濱谷 弘志 先生
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身体教育学、野外教育、冒険教育先生が目指すSDGs
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