独立行政法人の組織と経営を考える
政府の事業を代行する独立行政法人
独立行政法人制度は、政府の事業を代行するために2001年に制定されました。これは1980年代にアメリカやイギリスで推し進められた「小さな政府」という、国の活動をできるだけ小さくして民間の自由な活動に任せようとする動きを受けたものでもあります。民間企業の手法を用いた経営を行うことで、事業の効率を高めることが目的です。独立行政法人は国が定めた経営目標に向かって、自ら計画を立てて運営を行っています。経営の効率化が期待される一方で、独立行政法人である国立科学博物館が2023年に行ったクラウドファンディングでは、資金調達の自由度の高さだけでなく、運営資金不足の深刻さも注目されました。
民間企業出身者が組織のトップに
独立行政法人のトップの属性が、経営の効率化にどう影響しているかを調査した研究があります。背景には、民間企業の経営手法の浸透への期待から、まずは「組織のトップを民間企業出身者から起用する」という人材の動きの活発化がありました。研究ではトップ人材の「年齢」「専門性」「民間企業経験」「行政経験」等の属性に着目して、全国87の独立行政法人を対象に分析がなされました。その結果、トップ人材は「高学歴」で「専門性が高い」人が多く、それが効率化にも寄与しているとデータで示されました。一方で、民間企業の経営経験が豊富でも、効率化が達成されるわけではないことも明らかになったのです。今後は関係者へのインタビューなどを通じて具体的な事例を収集し、民間企業出身者がトップに就任した際に起こりうる効果やミスマッチを分析することで、独立行政法人の事業の更なる効率化への寄与が期待されます。
よりよい社会をつくるために
一方、フランスでは1980年代に水道事業を民営化したものの、問題が多発して2010年に再度公営化した事例もあります。国や民間が担う事業や組織の経営については、より良い社会をつくるためにさらなる研究や議論が求められます。
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