講義No.13324 生物学

足もとに咲く小さな花から知る生物のつながり

足もとに咲く小さな花から知る生物のつながり

華やかな花だけが花ではない

「花」という言葉を聞いた時、私たちのほとんどが思い浮かべるのは、サクラやチューリップ、バラ、ヒマワリといった、見た目にも華やかで美しい花々ではないでしょうか。しかし、それらだけが花のすべてではありません。道端などに生えている雑草と呼ばれるような植物たちもまた、美しい花を咲かせ、さまざまな昆虫とともに生態系を形作っています。

コミカンソウの受粉を助ける昆虫たち

コミカンソウは、空き地や道端などに見られる普通の植物です。日本では、本州から沖縄にかけて分布しています。高さは20〜30センチほどで、夏になると、直径2〜3ミリ程度の小さな花をたくさん咲かせます。これらの花は雄花と雌花に分かれていて、雄花から雌花へ花粉が運ばれないと種子ができません。コミカンソウでは、昆虫が花粉の運搬を担います。
コミカンソウの花を訪花する昆虫を観察していくと、実に10種類以上もの昆虫が花粉を運ぶ「送粉者」としての役割を果たしているらしいことがわかってきました。コミカンソウの花の一つ一つはごく小さなものですが、常に蜜を出し続けているので、昆虫たちの貴重な餌資源となっているのです。
海外の研究では、コミカンソウではアリが送粉者として主要な役割を担っているとされていました。しかし、飛べないアリは、同じ株での自家受粉ばかりを進めてしまう傾向があり、ハチやアブの方が送粉者としてはより重要な役割を果たしているらしいこともわかってきています。

生物のつながりを解明していく

コミカンソウについて、その名前や特徴を知らなければ、ただのありふれた雑草として、気にも留めずに見過ごしてしまう人がほとんどでしょう。しかし、私たちの普段の生活のすぐ近くにも、さまざまな生物たちが作り上げる複雑なつながりが存在しています。そうしたつながりを一つずつ見つけていき、生態系の仕組みを解き明かしていくことが、花や昆虫を研究することの意義なのです。

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公立鳥取環境大学 環境学部 環境学科 教授 笠木 哲也 先生

公立鳥取環境大学 環境学部 環境学科 教授 笠木 哲也 先生

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植物生態学、送粉生態学

先生が目指すSDGs

メッセージ

自然について学びたい人は、まず、身近な植物や昆虫など、生き物の名前を覚えることから始めてみましょう。例えば、植物の名前を知らなければ、すべて同じ緑の草や木にしか見えないかもしれません。しかし、その名前を知っていると、植物の種類による開花特性の違いや、植物と昆虫の関係などが見えてきます。生き物についての知識を蓄えて、さらに大学で専門分野について学術的に学んでいくと、自然の仕組みについて研究を深めていける段階に進めると思います。天気のいい日には、外に出て、いろいろな生き物を見つけてみましょう。

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本学は環境学部と経営学部の2学部を設置し、「環境」と「経営」2つの視点をもった普遍的な「知力」を土台に、人と人とのつながりを通して身に付く「人間力」を形成し、主体的に学び、考え、行動し、課題解決や新しい価値を創造できる、10年後、20年後の社会でも活躍できる人材を育成する学びを展開しています。
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