「中身はおまかせ」で減るフードロス 効果を数学で見える化

「中身はおまかせ」で減るフードロス 効果を数学で見える化

需要の平準化でフードロスを減らす

オペーク(opaque)とは「不透明な、よく見えない」という意味です。商品を売る時に一部をオペークな商品として販売して、商品需要のばらつきを小さくする(需要を平準化する)方法があります。例えば緑黄色野菜のパプリカには、赤・黄・緑などの色がありますが、色ごとに売るだけでなく「色はおまかせ、もしくは選べない」という選択肢があると、その需要を用いて色ごとの需要のばらつきを小さくし、特定の色が売れ残ったり、特定の色が売切れて販売機会を逃したりするリスクを低減することができます。こうした売り方はすでにさまざまな分野で行われていますが、とりわけ傷んで価値が失われやすい生鮮食品に取り入れることでフードロスを低減できます。

商品本来の価値を損ねずに

あるタイミングまでに売れないとムダになるという点では、ホテルの部屋や航空機の座席も同じです。「A・B・Cいずれかのホテル(あるいは航空会社)」というオペークな選択肢を用意することで、需要のばらつきを調節しながらスムーズに売ることができます。指定ができない分、割安にすることはあるにせよ、商品本来の価値を損ねるような廃棄直前の大幅なディスカウントや品切れをせずにすむのが、オペークの利点です。限られた資源を無駄にしない「SDGsに貢献する選択」とアピールすることで、値引きせずに販売できる商品もあるでしょう。

どのくらいオペークにすればいいの?

それでも買い手の中には、特定の商品を選んで購入したい人も多くいるはずです。実際に導入する場合、どのくらいの商品をオペークにすればよいのでしょうか? 実はそれほどたくさん必要というわけではありません。少数の人がオペーク商品を購入すれば、需要を平準化してロスを低減できるのです。オペークをやってみようとするスーパーや飲食店のオーナーは、公式を使ってオペークの効果を事前に確認できます。このように経営の問題に対して数学を使うと、フードロス低減と売り上げアップを同時に実現させることができるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

名古屋商科大学 経営学部 経営情報学科 教授 笹沼 克信 先生

名古屋商科大学 経営学部 経営情報学科 教授 笹沼 克信 先生

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数学、統計、データサイエンス、OR

先生が目指すSDGs

メッセージ

日本にはトヨタ生産方式のように現場のアイディアで成功した事例がたくさんありますが、このような現場の優れた発想を数学的に説明しようとする試みはあまりなされていません。現場の工夫の本質を数学というツールを使って体系化し、うまくいく理屈を解明することによって、優れたアイディアの他分野への応用が初めて可能になります。興味を持って観察すると、現場の人たちが生み出した様々な工夫を日常生活のあちこちで見つけることができます。そのような工夫を見つけたら、どういうメカニズムかと興味を抱くことから研究は始まります。

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