病気は細胞の核が教えてくれる! 細胞診検査の精度を上げるために
細胞を見れば病気がわかる
臨床検査のひとつに、「病理細胞診検査」があります。患者から採取した子宮の細胞や尿、喀痰などをガラスに塗りつけて、それを顕微鏡で見て細胞の形や大きさ、色の変化を探ります。がんになると細胞内にある核の形がゆがむため、がんになっている細胞を見つけて速やかに精密検査に回したり、病気になる予兆をつかんだりできるのです。
核の形を決めているのは何?
しかし、見た目は同じようながん細胞の核でも、実はたんぱく質がそれぞれに変化していることもあります。そのことを証明するために、病気になっている細胞の観察が行われました。女性の卵巣にできるがんの組織がコンピュータで解析された結果、核の形を維持するたんぱく質の発現が元々のがん細胞と転移先とでは変化していることがわかりました。たんぱく質の働きが変わることで、よりがん細胞が転移しやすくなっているのではないかと考えられます。たんぱく質がどの程度働いているかは人の目ではわかりません。コンピュータで解析して働きを数値化したことにより、卵巣のがん細胞が転移しやすい要素として考えられる可能性が突き止められました。今後も病理組織や細胞診検査に関する現象を解明すれば、新たな評価基準を見つけたり、検査の精度を高めたりできるはずです。
客観的で正確な診断をするために
細胞診検査は基本的には人の目で見ているので、診断結果に個人差が出てしまいます。客観性に欠ける部分や、正確な判断が難しい部分もあることが細胞診検査の課題です。しかし病気の遺伝子を見つける精密検査に比べると安価に実施できるため、より多くの患者を救える可能性があります。
検査精度を上げるためには、客観的で厳密な指標が必要です。これを実現するために、コンピュータの画像解析を導入しようと研究が始まっています。例えば画像を解析して細胞の大きさを数値で表せれば、客観的な判断が可能です。人の目とコンピュータの客観性を組み合わせることで、お互いが見逃してしまう部分も補い合えるようになることが期待できます。
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