廃棄物から未来のエネルギーを生み出す
バイオマスエネルギーとは
廃棄物や有機物からエネルギーを生産する「バイオマスエネルギー」の研究は、再生可能エネルギー研究の一つとして注目されています。具体的には、家畜の排せつ物や木や草、生ゴミなどを利用します。これにより、廃棄物の再利用とエネルギー生産を同時に行うことができて、環境にも優しいとされています。ブラジルでは、サトウキビから作ったエタノールが車の燃料として使われており、環境負荷が少なく価格も安いと歓迎されています。日本でも、国内の廃棄物から効率的にエネルギーを生み出す研究が行われています。
堆肥化熱の研究がもたらす可能性
「堆肥」とは、植物や動物の排せつ物から作る有機肥料のことです。堆肥化の過程では、微生物の働きにより、高温になることが知られています。この熱に着目して、エネルギーとして利用しようという研究が進められています。現在は熱の時間変化や堆肥内での温度分布などを調べて、適切な抽出方法を検討しようとしている段階です。
一方、堆肥は肥料として販売されますが、品質にバラつきがあり、全量を売却できないこともあります。良質な堆肥とは、窒素、リン酸、カリウムなどの成分バランスが適切なものです。堆肥化の過程で発生する熱により、病原菌や雑草の種子が死滅することも重要です。もし熱の発生を制御できれば、これらを十分に死滅させた、高品質な肥料の生産が可能になります。つまり熱の発生メカニズムを解明することは、エネルギー生産だけでなく、農家の収益向上にもつながるのです。
廃棄物問題とエネルギー問題を同時に解決
将来的には、コンポストと呼ばれる生ゴミの堆肥化装置を使って、一般家庭の生ゴミからもエネルギーを生み出せるようになるかもしれません。この技術が確立されれば、各家庭が自らのゴミからエネルギーを得られるようになります。バイオマスエネルギーの研究は、廃棄物問題とエネルギー問題の両方に貢献し、これからの社会を支える技術の一つなのです。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。