「神の見えざる手」がみんなを幸せにする?
経済学=お金についての学問なのか
経済学は、お金について学ぶ学問だと誤解されがちです。経済学が最も大切にしているのは「厚生」であり、「みんなの幸せ」を目的としています。そのための一番大きな手段が、お金なのです。では、個人や企業が自分や仲間内の利益を追求することは、経済学の目的に反しているのかと言えば、そうではありません。18世紀の経済学者アダム・スミスは、著書のなかで「神の見えざる手」を提唱しています。パン屋がパンを作って売るからこそ、人々はおいしいパンを食べることができます。このように自分たちの利益を追い求めることが、結果としてみんなの利益にもつながっていく、そうなるように神様の見えない手が社会を動かしているという意味です。
厚生の科学で常識を覆す
自分の利益を追い求めることがみんなの利益につながるというのは、不思議な話に聞こえるでしょう。経済学の面白さは、このような常識を覆す考えを「モデル」と言われる数式で表現し、データを解析して実証するところにあります。世の中のためにと考えて商品を作るよりも、純粋に利益を追い求めたほうが良い商品ができて社会全体の利益になるということも、数学を使って証明できます。経済学は文系に分類されていますが、物理学を規範として発展してきた「厚生の科学」なのです。
経済の語源は「経世済民」
エコノミクスという学問を経済学と訳したのは明治時代の日本で、世を経営して民を救済するという意味の「経世済民」という言葉が語源となっています。学問の本質をよく表しており、今では韓国、中国、台湾でも経済学という漢字を使っています。
地震などの大きな災害が起きたときに、被災地へ駆けつけたいがさまざまな事情でかなわず、自分だけが安穏と生活していいのだろうかという葛藤を抱えることがあります。しかし、自分の仕事に精一杯取り組んで良い商品やサービスを生みだすことが、経済を発展させて、結果として被災地の復興にもつながっていきます。それが「神の見えざる手」なのです。
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福岡大学 経済学部 経済学科 教授 山﨑 好裕 先生
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