「日本的経営」は時代遅れなのか
大きな変化が必要だが
世界的に、ビジネスの世界では、様々な情報をAIが処理する「デジタル化」が進むとともに、地球温暖化問題解決のために、ビジネスで生じる温室効果ガスの排出をゼロに抑えるための取組が行われています。そのため、例えば、ヒトの行っていた作業をAIに置き換えたり、自動車の「電動化」を進めるなど、働き方や産業構造の大転換が必要となっています。ところが、日本の多くの企業の特徴である「日本的経営」は、大きな変化が苦手とされています。
日本的経営の特徴と課題
日本的経営は、戦後の高度経済成長の中で、企業が人手を確保し、効率的に生産を増やすために定着してきました。従業員を大切にする「終身雇用」や「年功序列」のほかに、「社内で経験を積んだ従業員が経営者になる仕組み」や、「取引先との長期的な関係を重視する姿勢」などを特徴としています。ところが人口減少やデジタル化といった時代の変化につれて、日本的経営の限界が表面化しました。終身雇用は、残業や転勤の指示に従う男性正社員を前提にしていて、女性や高齢者が働きにくかったり、年功序列の賃金体系のために、若いITの専門人材に高い報酬を払いにくかったりしたのです。さらに、社内で育った経営者には、昔からの取引先との関係見直しなどの大きな決断をしにくい傾向も見られます。
働く人がいきいきと活躍できる経営を
近年は、国を挙げた「働き方改革」や企業の「ジョブ型雇用」の導入など、時代に合った経営のあり方が模索されています。一方で、株主資本主義が徹底してきたアメリカで2019年に、「株主だけでなく顧客・従業員・取引先の利益を重視する」という経済団体の声明が出されて話題になりました。株主の利益を最優先するアメリカで、日本的経営の良さや、持続可能なSDGsの観点が見直された内容とも言えます。
日本でも、日本的経営の優れた部分を残しながら、時代に合わせた見直しを行うとともに、教育訓練の充実などにより若い世代も含めて働く人がいきいきと活躍できる環境整備が求められています。
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亜細亜大学 経済学部 経済学科 教授 茨木 秀行 先生
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