果物の品種開発、優れた果実をピンポイントで選ぶ技術って?
果物の開発にはどれくらいかかる?
果物を品種開発するには、おおよそ10~20年もの年数がかかります。例えばサクランボの場合は、まず2つの品種を交配して種を取り、さらにその種を畑にまきます。そこから育てて実がなったら、実際に実を食します。糖度や酸っぱさ、見た目などさまざまな点から実を食べ比べて、新しい品種に適するものだと認定されたらようやく品種の登録ができます。今スーパーなどで手に入る果物は、こうした20年にも及ぶ開発を経て、ようやく新品種として認められているのです。
前もって優れた個体を選ぶ技術
最近は遺伝子技術が進歩したことで、葉から取ったDNAを解析して、将来的にどういう果実になるかを早い段階で判断することが可能となりました。遺伝子技術を使い、前もって目当ての形質を持つ個体を選ぶことを「DNAマーカー選抜」といいます。これまでの品種開発では、ランダムに畑に種をまいて、実がなってから品質の劣るものを伐採するという手順が必要でした。DNAマーカー選抜が導入されてからは、果実が大きい個体や着色が良い個体だけを畑に植えて、育てたものの中からさらに優れたものを選べるようになりました。品種登録に至るまでの年数はこれまでと同じですが、品種が出る確率が上がります。また、見込みのない個体を育てる必要がなくなったので、人件費や農薬・肥料代などをカットできて、畑も有効活用できるようになりました。
技術の進歩でさらに選抜が効率化
さらに、今後実用化が期待されている技術に「ゲノミックセレクション」があります。DNAマーカー選抜と同じく早い段階で優れた果実を選抜できる技術ですが、より効率的な選抜が可能です。DNAマーカー選抜では果実が大きいグループと小さいグループのような分け方しかできませんでした。ゲノミックセレクションは、遺伝子の情報からその個体が将来どのような形質になるのかを予測するもので、果実の大きさ、収穫時期、糖度、酸度などの複数の形質についてピンポイントで選ぶことができるのです。
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東北農林専門職大学 農林業経営学部 農業経営学科 准教授 多田 史人 先生
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