遺伝子の力を借りて、花の色や形をデザインする！

「バイテク育種」で不可能が可能に

一般的な品種改良（育種）は交配によって進められますが、優れた形質を持つ品種を作り出すには何度も交配を繰り返し、選抜を行う必要があり、欲しい形質を持つ突然変異体の探索も容易ではありません。また、本来その種が持っていない形質を持たせることは通常の交配育種では不可能です。これに対して、遺伝子組換えやゲノム編集などの「バイオテクノロジー（バイテク）」を使えば、ピンポイントで欲しい形質を与えることや、別の種の遺伝子を利用することも可能です。
例えば、一重咲きの青いリンドウは仏花としてよく使われますが、バイテク育種で赤や黄色の、また八重咲や、さらに花弁の多いバラ咲きのリンドウができれば、ブライダルなど新しい市場の開拓が期待できます。このように、花の色や形を自由にデザインできるような、バイテクの研究が進められています。

遺伝子組換え技術

本来その花にない色を作るには、遺伝子組換え技術で外来遺伝子を入れるのが一つの方法です。例えば青いリンドウにナデシコ目植物のペタレイン色素生合成遺伝子を入れると、赤や黄色のリンドウを作ることができます。ただし、色素を作る遺伝子を入れても花弁だけで発現するとは限らないため、葉や茎の色が変わってしまうかもしれません。そこで、花弁だけで特異的に発現するような配列（プロモーター）を導入する遺伝子の前につけておきます。タバコなどのモデル植物に関しては、花を赤や黄色に変える遺伝子組換え技術がほぼ完成しています。

ゲノム編集技術

「ゲノム編集技術」を使えば元からある遺伝子を壊して人為的に突然変異を起こすことができます。花を自由にデザインするためにはまず関連する遺伝子機能を知る必要があるため、特定の遺伝子をゲノム編集技術で破壊して、その機能を解する研究が行われています。現在のゲノム編集技術では、ゲノム上の狙った配列を壊すための効率や精度を上げる研究も行われています。

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福井県立大学生物資源学部生物資源学科教授西原昌宏先生

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植物分子育種学、植物分子生物学

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メッセージ

現代は不確実な時代だといわれています。このような時代を生き抜くためには、臨機応変な力をつけておくことが必要でしょう。学問でいうと、幅広い知識を学んでおくことがその一つです。何かに特化して、その分野のエキスパートになればいいという考え方もあるかもしれませんが、専門外の知識はひょんなところで役に立ってくるものです。また、専門外の知識が新しいひらめきにつながることもあるでしょう。好きなことだけでなく、少しずつでもいいのでいろいろなことを幅広く学んでほしいです。

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