バルカンの歴史に見るグローバル化

バルカンの歴史に見るグローバル化

グローバル社会とは

現在の社会は「グローバル社会」と言われます。これは世界各地が密接につながり、地球上のある場所で起きたことが、国を超えてほかの地域に影響を与える社会です。現代では、ものも、お金も、人も、情報も世界中を行き来していて、結びつきが相互に強まっています。
しかし、グローバル化は決して新しいことではありません。人類の歴史はグローバル化の歴史であるともいえます。とはいえ、特に19世紀以前と以降では各地域の結びつき方は大きく異なります。それ以前は、地球にはいくつもの「世界」がありました。東アジア世界、南アジア世界、イスラーム世界、東欧世界、西欧世界などです。

西欧化した現代の世界

さて、現在のグローバル化した地球は、西欧世界がほかの世界へ進出したことにより徐々に形作られたと考えられます。現在の国家のあり方や外交、政治のやり方、自由や平等という思想などには西欧のものが浸透していますし、英語とフランス語が主要な国際語であるのもその表れです。
しかし、西欧世界が単に一方的にほかの世界への進出と支配を行ったことで世界が一体化したわけではありません。実際の過程はもっと複雑で、そのことは、バルカン半島の歴史を見るとわかります。

バルカンに見るグローバル化

バルカンは、長きにわたって大国の支配下に置かれた歴史を持ち、そこにはいろいろな民族が住んでいます。17世紀までバルカンを強力に支配していた、イスラーム世界を代表する強大なオスマン帝国は、18世紀に入ると、西欧の国々や力をつけたロシアに対して劣勢に立たされます。以後、ロシアや西欧諸国は戦争に勝利してバルカンに進出し、また、西欧から来た「民族」という考え方に影響されたバルカンの人々は、自立のため助力を得ようと、西欧の国々やロシアと結びつくようになります。
こうして18~19世紀、イスラーム、東欧、西欧という3つの世界は、バルカンを中心に緊密に結びついていきました。現在のグローバル社会は、地球上の各地でこのようなプロセスが起こることにより成立したのです。

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東京大学 教養学部 地域文化研究学科 准教授 黛 秋津 先生

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歴史学

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メッセージ

何かの事象を考えるときには、広い視野で考えなくてはなりません。現代においては、身近で起こったあることがらには、さまざまな要因が絡んでいるのです。身近な事象でも、ローカル、リージョナル、ナショナル、グローバルというさまざまなレベルで考えてみてください。
また過去にさかのぼってみることも重要です。歴史学は、今あることをよりよく理解するために昔のことを探る学問です。ある出来事の本質は、時間と空間を縦横無尽にたどることによって、よりよくわかるようになると思います。

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東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。