公衆衛生は社会の総力をあげた活動! みんなのもの
公衆衛生は行政に任せるもの?
公衆衛生について考えてみましょう。公衆衛生の考え方は、産業革命時のイギリスで誕生しました。都市の人口が激増し、空気や水質の汚染が深刻となり、さらに過酷な労働など都市住民の健康が悪化してきたため、都市の衛生環境を改善することが必要となってきたのです。そのため1848年に世界初の公衆衛生法がイギリスで成立したのが公衆衛生制度のはじまりなのです。わが国では第二次世界大戦後、憲法で公衆衛生が位置づけられたのですが、今なお「公衆衛生は国や自治体が公共事業的に取り組むもの、行政に任せるもの」というイメージが強いのではないでしょうか。
公衆衛生の「公」は社会全体という意味
実は公衆衛生の「公」の字は「国」や「行政」という意味ではなく、社会全体を表しています。例えば、現代の公衆衛生が取り組まなければならない課題のひとつである児童虐待を例にとると、虐待してしまっている保護者が自分の力だけで問題解決することは難しいでしょう。では、「児童相談所や警察の出番では?」ということになりますが、果たしてそのような行政機関に頼るだけで解決につながるでしょうか。
「官」のみに頼らず「公」を充実させよう
日本では個人でできないことがあると、すぐ行政に依存してしまう傾向がありますが、英米ではそこに至るまでに、人々が力を結集して民間で支援活動を行うなどの取り組む姿勢が培われてきました。保護者が児童への虐待をやめられない場合は、近所の人が子どもを預かったり、みんなでお母さんの悩みを聞くことはできないかと考えます。つまり、何でも行政である「官」任せではなく、地域のコミュニティやNPOなど「公」の受け皿が発達しているのです。公衆衛生の主な役割には感染症対策、環境衛生、食品衛生、疾病予防などがあります。「官」にしかできない法的措置や制度づくり、調査などは「官」に任せ、地域や民間組織などが助け合う「公」のレベルを充実させることが日本でも求められているのです。
参考資料
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