その人らしく生ききることを支える看護とは?

高齢者の力を引き出す
「自分で体を動かすことができません」「言葉を話すこともできません」と入院してきた高齢者に、看護師が日常的なケアをしていく中で、「この人は実は動ける」「話せる」とわかることがあります。高齢になると感覚器や運動器、脳の機能などが衰えて、いずれは動けなくなり、話せなくなるときがやってきます。しかし、中には反応するのに時間がかかっているだけの人や、病気やケガをきっかけに動いたり話したりする機会を失っていただけの人もいるのです。高齢者の力に気づくことのできる看護師は、どんなケアをしているのでしょうか。長期入院している高齢者が多い病院で、熟練看護師のケアを観察した研究があります。
体を心地よく保ち、その人の選択を尊重する
認知症などで意思をうまく伝えることができなくなった高齢者は、何もわからないと思われがちです。しかし、熟練の看護師は、痛みを感じていると思われるときも、心地よいと思われるときも、その人が発しているものをキャッチしようと意識を向けています。関わり方次第で力を引き出せることがあると知っているからです。あいさつをしたときの目の動きで伝えたい様子に気づき、反応を待つこともあります。苦痛を和らげ体を心地よく保つことは、その人がより良く生きるための基本です。少しでも意思の疎通ができると、その人の選択を尊重できます。例えば食べたいか食べたくないか、食べるなら何が食べたいか、小さな選択の積み重ねがその人らしさにつながり、最後までより良く生きることにつながっていきます。
無意識のスキルを見つけて言語化
看護の実践を観察する研究では、同じ状況は2度と起こりません。しかし、いろいろな状況を観察して、看護師から話を聞き、データを集めて分析することで、関わり方の芯となる部分が見えてきます。熟練の看護師が無意識に行っているような、言葉にすることの難しい行動を見つけて適切な言葉にすることで、研修などを通じて多くの看護師に伝えられるようになります。
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