「デパ地下」をどう翻訳する?
絵本の翻訳
「The Very Hungry Caterpillar」の日本語版である『はらぺこあおむし』は、子どもに人気の絵本です。「おや、はっぱのうえにちっちゃなたまご」と月が話す冒頭は、原書では「In the light of the moon a little egg lay on a leaf.(月明かりの下の葉っぱに小さな卵がある)」としか書かれていません。日本では日常的である擬人化を使って、親しみやすくなるような翻訳の工夫がされているのがわかります。
吹き出しに収めるには
あおむしが食べる「plum」を、「プラム」のままにすると子どもが知らない可能性があるので、日本語版では「すもも」と訳されています。読み手のターゲットに合わせた翻訳の必要性は、日本語から英語にする場合も同じです。漫画『のだめカンタービレ』は、2つの英語版が出版されています。主人公が友だちの弁当を食べてしまうシーンに「デパ地下」という単語が出てきます。これを英語に直訳すると「Food sale section in the basement of the department store」になり、セリフの吹き出しの中には納まりません。そこで、翻訳版の1つはアメリカ風の「grocery section」、もう1つはイギリス風の「food hall」と訳しています。意訳しながら、読み手のターゲットに合わせた英語を選んでいるのです。
時代背景と言葉
村上春樹の『ノルウェイの森』は1987年に発行された小説であるため、「スチュワーデス」という言葉が出てきます。最近は英語でも「Flight attendant」と言うことが多くなっていますが、もしそのように現代風に翻訳したら、1980年台の雰囲気が伝わるでしょうか。小説の雰囲気を考えた言葉選びも重要です。『ノルウェイの森』も2つの英訳版が出版されています。使われている言葉を比較しながら読んでみると、それぞれの翻訳者の工夫が読み取れるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
神田外語大学 グローバル・リベラルアーツ学部 グローバル・リベラルアーツ学科 教授 ロバート デシルバ 先生
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